ジャンル(コメディ)
原作:可那他
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時刻はうららかなお昼すぎ。
とある森の中を鼻歌交じりで機嫌よく散歩中だったカルナラ青年は、ふと立ち止まります。
たたたたたた・・・・!
どこからか軽やかな足音が響いてきます。
「・・・?」
音のするほうへ振り向いてみると。
「うひゃーー!超やばいー!急がないと遅刻じゃーん!」
そんな独り言を叫びながら、頭には真っ白な二つの長い耳、お尻には真っ白でまん丸ふわふわハミング仕上げの尻尾が一つ、伸びやかに伸びた、白い手と足先にはふわふわな肉球付きの手足。

着ている服はといえば、チビTシャツに超ミニ短パンのみ!の見事なへそだしルック
どこからどう見ても”バニーちゃん”な格好をした、シザークシロウサギが走って来るではありませんか!

その首からは鎖のようなもので繋がれた、大きな時計がぶら下がっていて、シザークシロウサギはその時刻を凝視しながら、非常に焦った雰囲気で駆け抜けていこうとしました。

「・・・っ、おい、君!?」
そのあまりに見慣れない生き物に、思わずカルナラが声をかけます。
「っ!?なに?おれ、急いでるんだけど?」
振り返ったシザークシロウサギを間近にみたカルナラ青年、その可愛らしさに胸キュンハートはブロークン♪
思わず。
シザークシロウサギのふわふわ肉級両手をがっちりと握り締め、
「おおおおおおお暇でしたらお茶など御一緒にいかがですか!?」
と、迫ります。
「えっ!?お茶!?何言ってんだこのアンポンタン!俺はこれから女王様のお茶会に行く所なんだよ!邪魔すんな!!」
掴まれた両手をベシッ!とばかりに冷たく振り払った途端、シザークシロウサギの首から下がっていた大きな時計から、ジリジリジリ・・・!と、目覚まし時計のような音が響き渡りました。

「うわっ!どーしてくれんだ、このバカ!遅刻しちまったじゃねーか!!」
叫んでカルナラの胸倉を掴み上げたシザークシロウサギの真後ろに、突然魔方陣が出現!
「えっ!?」
「うわっやば・・・!!!」
2人同時に上がった声と供に、2人の姿はその魔方陣の中へ吸い込まれ、掻き消えてしまったのです。









つんつん・・・。

何かがほっぺたをつついています。
その感覚に目を開けたカルナラの目の前に、カボチャの帽子にカボチャ型のつなぎのような服・・・の腰の所にベルトを巻いて、そこに剣を差した如何にも珍妙・・!な格好をしたフィズ。

「よー?生きてるかー?」
「な、なんだ?お前は!?」
「ア?俺?野菜王国のフィズ=カボチャーン」
「は?や、野菜王国!?」
「そう。ここはナス=タ女王の治める、”野菜嫌いは無理やり矯正王国”、略して野菜王国だ!」
「や、野菜嫌いは無理やり矯正・・・王国!?」

なんですかそれ?

といった顔つきになったカルナラに、フィズが不意に真面目な顔つきで言った

「君!嫌いな野菜はあるか?」
「えっ?い、いえ特には・・・・」
「料理はできるか?」
「そ、そこそこ・・・・」
「で。君はカボチャは好きか?」
「は・・?カボチャ?ええ好きですが?」

途端に満面の笑みを浮かべたフィズが、カルナラの肩をガシッとばかりに掴んで言った

「・・・・‥友よ!」
「はい?」
「いやー、君ならばきっとできる!」
「は?」
「ナス=タ女王にかけられた呪いを解いてくれ!」
「へ?」
「女王様が変なホウキを手に入れてからというもの、野菜嫌いな住人を次々と野菜に変えてしまうのだ。そこで考案したフィズ特性”フライパン返し”!」

そう言って、カルナラの手に見事に黒光りしたフライパンを押し付けます。

「フ、フライパン!?」
「そうだ!女王様がホウキから”嫌いな野菜になってしまえ光線”を出したら、野菜料理の名前を言いながらこれで受けろ!たちどころに魔法はその料理へと変わってしまう・・・はず!」
「・・・・・・・はず?」
「こ、細かい事は気にするな!さ!行くのだ!!友よ!!」
「行くって、どこへ・・・!?」
「ここからだ!」

そう言うと、フィズがすぐ横にあったダストボックスを開け放ちカルナラをエイヤッ!とばかりに放りこみます。

途端

『生ゴミは決められた日に出さなあかん言うてるやろー!』

不意にダストボックスが叫んだかと思うと、放り込まれたカルナラをポーーーーーイッとばかりに吐き出します

「ぎゃーーーーーーーーーー・・・・・・・」
「いってらっしゃーーーーい♪」

フィズの満面の笑顔に見送られ・・・悲痛な悲鳴とともに、天高く吐き出されたカルナラは、そのまま城の最上階、女王の居る場所へと向かって一直線♪

「お、おちるー」

何とか城の最上階の屋根にしがみついて落下を免れたカルナラが、その下にあったバルコニーにエイヤッ!とばかりに降り立ちます。
その背中には、フィズによってしっかりと括り付けられた”フライパン返し”が。

開け放たれていたバルコニーの扉の影から中を覗いて見ると・・・


「い、いたたたたた!!痛いってば!ナスタ!!」
「・・・・ほぉ〜〜〜?シロウサギの分際で私を呼び捨てにするとはいい度胸だな?シザ〜ク〜?」
「ギャッ!前言撤回します!ナス=タ女王さま〜〜!!」

なんと!

あのシザークシロウサギが、豊満な胸元を強調した豪華な紫色のドレスを身につけたナス=タ女王が座る玉座の足元・・・真っ白な足拭きマット代わりに足蹴にされて好き放題に踏みつけられているではありませんか!

「ふっふっふ・・なかなか足蹴心地が良いな。やはり足拭きマットはシロウサギに限る」
「何で足拭きマットなんかにされなきゃなんないの!?」
「ふっ、ほざけシザーク。私が来いと指定した時間に遅刻した当然のバツだ」
「だから!遅刻したのは俺のせいじゃなくって、あの、アンポンタン野郎のせいなんだってばー!!」
「アンポンタンは貴様だろう。理由なぞどうでも良い。お前はこれから一生私の足拭きマットだ」
「うそっ!・・・あ!お前・・!お前のせいだ!何とかしろ!」

扉の影から目の前の光景を呆然と見つめていたカルナラに気が付いたシザークシロウサギが、ナス=タ女王に踏みつけられながらも言い放ちます

「ん?なんだ?お前は?」
「お、俺はカルナラだ!シ、シロウサギを離せ!!ナス=タ女王!!」
「ほう・・・?この足拭きマットに何のようだ?」
「可愛いシロウサギをお茶に誘いに来た!」
「ほぉ〜〜〜庶民の分際で生意気な!お前など大根で十分だ!」

シザークシロウサギを足蹴にしたまま立ちあがったナス=タ女王が、脇に立てかけていたホウキを手にしてカルナラに向かって振り抜きます

「大根になってしまえ!」

ビビビビ・・・・!
放たれた光線がカルナラに向かって一直線!
ハッとばかりに背中の”フライパン返し”を手に取ったカルナラがその光線を見事にフライパン返しにしながら言い放ちます!

「これぞ庶民の味の王道!一晩置いたおでんの大根!」

途端

ポン♪とばかりに跳ね返された光線が、湯気の出るおいしそうなおでんの大根になって、床の上に出現したではありませんか!(もちろん衛生上、皿つきで)

「なに!?」

思わぬ反撃に緩んだナス=タ女王の足元から抜け出たシザークシロウサギが、「うわーうまそーー!」とばかりにおでん大根に飛びつきます

「おのれ・・!ピーマン!!」
「中国3千年の味に敵うものなし!チンジャオロース!」
「パセリ!!」
「とんかつの衣に混ぜると意外に美味いのを知らないか!」
「ク・・ッセロリ!!」
「中国3千年の味第2弾!イカとセロリの中華炒め!」
「タ・・タマネギ!!」
「こんがりキツネ色に炒めるのがミソ!オニオングラタンスープ!」

次々と現われる美味しそうな料理の数々に、シザークシロウサギが大喜びでがっついています
その横で、ナス=タ女王とカルナラがゼイゼイ・・と気迫のこもった闘いに睨みあっていました

「・・・どうした?嫌いな野菜はもうネタ切れか?」
「う、うるさい!」

焦ったように言い放ったナス=タ女王に、カルナラがフ・・・と勝ち誇ったような笑みを浮かべます

「はは〜〜ん、分かったぞ。お前にかけられた呪いの正体!」
「なに・・・!?」
「全国の小学生に聞きました、嫌いな野菜アンケート!その堂々5位は・・・」

言いかけたカルナラの声を遮るように、バーーーーンッ!!と、最上階の部屋の扉が開け放たれます

「こ、克服したぞ!!ナスタ!!」

現われたのは、繋ぎの清掃員制服を身につけた、”お掃除お兄さん”!

「っ!?い、今頃何のようだ!?」
「もう大丈夫だ!今、お前にかけられた呪いを解いてやる!」
「なに・・・っ!?」
「もうお前はナス=タ女王なんかじゃない!もとの・・ただのナスタに戻るんだ!」

言い放ったお掃除お兄さん、おもむろに取り出したハタキをカルナラに向かって振り抜きます

「俺は・・・茄子が大好きだーーーーっ!!」

ハタキから放たれた光線を、カルナラが”フライパン返し”で見事にナス=タ女王に向かって跳ね返します!

「ナス田楽ー!!」

「ぎゃーーーーーっ!!」

フライパン返しで返された光線が、見事にナス=タ女王にクリーンヒット♪
嫌いな野菜堂々5位にランクイン!していた”ナス”の呪いがお掃除お兄さんのナス嫌い克服による”大好きだ”光線によって、消滅!

残されたナス=タの”タ”と、カルナラによって返された”ナスデンガク”の言葉がドッキング!

”ナスデンガク”+”タ”=ナスタデンガク・・・ナスタデンガ・・・・ナスタ殿下!(なんつー駄洒落)

見事にナスと女体化の呪いは解かれたのであった!!!(なんつーオチ)


お掃除お兄さん復活により、シザークシロウサギは足拭きマット化を免れ、呪いを解いた英雄カルナラとともにシロウサギならぬ城ウサギとして城主に。(そんなオチ・・・)

見事女体化していた体から元の体に戻ったナスタは、お掃除お兄さんとラブラブな日々・・・。

カボチャ化から戻ったはずのフィズはといえば・・・

「あ?これ、結構気に入ったんだよね♪」

と、カボチャ帽子を生涯離しませんでしたとさ。

めでたしめでたし。(えー)


―END―


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100万ヒットおめでとうございます!!

と、とりあえず、謝っときます!(^_^;)
拍手絵のカボチャ帽子フィズに一目ぼれしたとか・・・そ、そんな理由では決して・・・!(笑)
茄子太仮面でもよかったんだけどなー(まて)

あ、野菜嫌いランキング!
ピーマン、パセリ、セロリ、タマネギ、ナス・・・はこの順位でほんとにこんなランキングだったんですよー(笑)

楽しませてもらいましたー!


背景素材:★素材通り★



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