「竜棲星-ドラゴンズプラネット」二次創作BL小説
制作--蒼木 紗夜様

「あっ……。……ん、カ……ルナラ……」

薄暗い廊下にひっそりと洩れ聞こえてくる甘美な声。
この声を聞くようになってどれくらいの時が経ったか……。

「はぁー」

何処までも続く冷たい大理石の廊下、重厚な両開きの扉の前にフィズは1人佇んでいた。
その重々しくも立派な扉に背を預け、フィズは大きな溜め息を一つ吐き出してその場に座り込んでしまった。
本来なら、一国の主をお守りするSPと言う立場で、しかも職務中にその守るべき主の部屋の前で、力なく座り込んでいてはいけないのであろうが、今のフィズにはそんなことは関係なかった。
そのお守りするべき主と、自分と同じ主を守らなければいけない立場の同僚が、この扉一つ隔てた向こう側で先ほどから仲睦まじく愛を育んでいるのだから……。
もちろん主とは国王陛下シザークのことで、同僚とは同じSPでありながら少尉でもあるカルナラのことだ。

(少しは一人身の俺の気持ちも、考えてくれたっていいじゃないか……。最近、俺が夜勤のときには必ずこれだ……)

フィズは恨めしげに扉のほうを見て、また大きな溜め息を吐き出した。
そして自嘲するかのようにぶつぶつと独り言を言って、両手で頭を抱え込んだ。

(そう言えば誰か言ってたよな……、溜め息を吐くたびに幸せが逃げていくって……。俺の幸せは一体何処にあるんだよ)

物思いにふけっているフィズの背後で、不意に扉の開く音が聞こえ、フィズは慌てて立ち上がると扉の脇へと移動し、扉のほうを振り向いた。
扉からは申し訳なさそうにカルナラが顔を出していた。
「……フィズ? そこに居るんだろ?」
廊下が薄暗いせいなのか、部屋の中が明るかったせいなのか、顔を出したカルナラには扉の脇に佇んでいるフィズの姿が確認できなかったらしい……。
先ほどまで一人身を憂いていたフィズは、幸せそうなカルナラの顔を見て、少しだけ意地悪をしてやりたい気分にかられた。
フィズはあえて返事をせずに、カルナラが部屋から出て自分を探しに来るまでは声をかけずにいようと思い、扉の脇で息を潜めて様子を伺った。

「フィズ?」
カルナラは完全に部屋から出て後ろ手に扉を閉めると、扉の前に立ってキョロキョロと辺りを見回した。
不思議そうな、それでいてどこか不安そうなその様子が、フィズの中の悪戯心を余計に煽る。

(自分ばっかり幸せ噛み締めやがって……、ちょっと悪戯してやるか)

フィズは暗がりの中でニヤリと笑うと、カルナラの背後にそっと忍び寄った。
自分より少しだけ背の高いカルナラにフィズは後ろから抱きつき、片手をそっと口元に押し当てカルナラの口を塞いだ。
「……んっ!!」
「しっ!! 声を出したら陛下が起きちゃうんじゃないの?」
背後から抱きつき、カルナラの顔を肩越しに覗き込んだフィズは、まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべてそう囁いた。
そんなフィズの顔を見たカルナラは、自分の口を塞いでいるフィズの手をやんわりと解き、ふーっと溜め息を一つ吐きだし、軽く眉間に皺を寄せてフィズのことを睨んだ。
「フィズ、ふざけるのもいい加減に……」
カルナラは口を開いて文句を言いかけたが、フィズは一向にカルナラの話を聞いている様子も、ましてや反省している様子もなく、笑顔でカルナラの話を遮った。
「カルナラ、悪い。ちょっと屈んでくんない?」
「はぁ?」
フィズの予想もしない一言にカルナラは素っ頓狂な声をあげて首を傾げた。
フィズが何をしたいのか? 何をしようとしているのかこの時のカルナラが知る由もなく、ただ不思議そうにその言葉の意図を考えて、しかめっ面で唸るしかなかった。
そんなカルナラに対してフィズは「いいから、早く」とカルナラの両肩を押し下げるように、自分の両手をカルナラの肩に乗せて体重をかけようとする。
その様子がまるでおんぶをせがんでいる子どものようで、カルナラは思わず笑みを漏らしてしまった。
「何だ? フィズ、俺におんぶでもして欲しいのか?」
振り向き様に微笑んでそう言ってきたカルナラの顔を見たフィズは、思わず照れて片手で自分の頭をクシャクシャッと掻いて見せた。
カルナラはそんな照れたフィズの様子を見て苦笑すると、ホラッとフィズに向かって両手を後ろに伸ばし、少し屈んで見せた。

(俺がしたいのはおんぶじゃなくって、お前に乗ることなんだけどね。まぁ、乗るって意味じゃおんぶも一緒だけど。お? いい感じの高さじゃん)

カルナラが屈んだ事で2人の身長差に僅かな逆転が生じ、フィズの口の高さ辺りにカルナラの耳がくる。
「んー、あながち間違いではないけど」
フィズはそう言って口角を上げニヤリと笑うと、右手はカルナラの肩に乗せたままで左腕をカルナラの首に回し、カルナラの動きを封じた。
その様子を不思議に思ったカルナラがフィズの方を振り向こうとしたが、その頭はフィズの左腕に抱え込まれ身動きが出来ない。
カルナラの頭はフィズの左腕でしっかりと固定されたため、首が自然と右側に傾く。
するとカルナラの左耳が剥き出しとなり、フィズはそっとその無防備な左耳に息を吐きかけ、耳朶を甘噛みした。
「くぅ……っ」
瞬間的にカルナラの体はビクンと跳ね、そして熱い息遣いが口から洩れた。
カルナラの反応に気を良くしたフィズは、甘く囁きながら更に耳を攻め続けた。
「あれ? カルナラ、どうしちゃったの?」
チュッと音を立てて耳に口付けを繰り返し、時に優しく吸い付いたり甘噛みしたり……、やがてカルナラの耳はクチュクチュと卑猥な水音を立てて、フィズの舌によって犯されていく。
「……っ、フィ……ズ。ん……ぁっ」
執拗に耳ばかり攻められ、カルナラの体から抗う力が失せていき、次第に中心からの熱を帯びてきたのか、その口からは艶っぽい声が洩れ始めた。
フィズは力の抜けたカルナラの体を後ろから支えるように体を密着させ、カルナラの頭部を固定していた左腕を開放し、その腕で肩を抱きとめた。
フィズの右手は肩口からスルスルとカルナラの脇のラインを堪能しながら下降していき、少し焦らすように大腿部を外側からなぞった。
大腿部を外側から内側へとゆるゆると右手を数回往復させ、大腿部の付け根にフィズの手が近付く度に小刻みに震えるカルナラの反応を楽しみながら、フィズの右手はカルナラの秘所へと確実に近づいていった。
「俺もしたいなぁ、なぁ、いいだろカルナラ。ココに俺のも入れさせてよ」
フィズはカルナラが履いているズボン越しに中指を秘所に当てると、クイッと力を入れて突き上げ、そう耳元で囁いた。
秘所を突き上げられ一瞬、カルナラの体はビクンと大きく弓なりに仰け反った。
「……っ!! 止せ、フィズ!!」
しかし、次の瞬間カルナラは左手で自分を支えていたフィズの腕を解き、右手で秘所を触っているフィズの手を掴んで払いのけた。
それまで大して抗いもせずされるがままになっていたカルナラだっただけに、急に抵抗されたフィズは戸惑って抗議の声をあげた。
「何だよ……、折角……」
フィズが抗議の声をあげる中、カルナラはくるりとフィズのほうに向き直り、がっしりとフィズの両肩を掴んで大声を出しフィズの体を前後に揺す振った。
「『も』って何だ!! 『も』って……」
「え? だってカルナラ、陛下に入れられてるんだろ? 立場的にも下な訳だし……。あれ? 違うの?」
「……ッ!! 違う!!」
やや怒気の含んだカルナラの態度に圧倒されて、フィズは思ったことをそのまま口に出してしまった。
そんなフィズの返答を聞いたカルナラは顔を真っ赤に染めて、ますます感情を剥き出しにしてフィズに噛み付くように否定した。
顔を真っ赤に染めて否定してくるカルナラの表情は、今のフィズにとっては恰好の獲物、フィズの悪戯心を余計に煽った。
フィズは嬉しそうに微笑むとカルナラの左耳に口を近付け、再び右手をカルナラの秘所に当ててそっと囁いた。
「えぇ? じゃぁさ、じゃぁ、もしカルナラのココに俺が入れたら、俺がカルナラのお初を貰っちゃうことになるの?」
「…………」
フィズにそう囁かれたカルナラは、フィズの右手を掴むと視線をフィズから逸らし、遠くの床を見るようにしてやや俯き加減で黙ってしまった。
カルナラが自分の囁いた一言にどんな反応をしてくれるのか楽しみにしていたフィズは、その反応に一瞬驚いたが、すぐにニヤリと薄ら笑いを浮かべてカルナラの肩をポンポンと叩いた。
「あれぇ? もうすでにソッチも経験済みなんだ……。本当、お前ってば真面目な顔して意外と好き物だよなぁ」
「なっ!!」
フィズのからかっている様なその言葉や態度に、カルナラは再び顔を真っ赤に染めると軽くフィズの手を払いのけ睨んだ。
顔を真っ赤に染めて自分を睨んでくるカルナラに対してフィズは、ニヤニヤと笑いながら更に間を詰めるようにして近付き、両手をカルナラの肩に乗せた。
「まぁいいや、この際詳細は聞かないでおくから。んで、どっちの方が気持ち良いの? 俺、カルナラが相手で、その上気持ち良いなら入れられるほうでもいいかな? お前上手そうだし、いつも聞こえてくる陛下の声もすごく気持ち良さそうだから」
悪びれた様子もない笑みを浮かべて近付いてくるフィズに、カルナラは思わず言葉が詰まり少し後退った。
「……っ。いつもって……」
「そうだよ。カルナラには責任とってもらわなくっちゃ、割に合わないよ。俺、言っとくけど一人身なんだよ? わかってる、その辺?」
視線を反らしながら後退るカルナラに、フィズは小首を傾げてにっこりと微笑み、また距離を詰めた。
フィズの言っていることがわかるだけにカルナラは居た堪れなくなり、俯くと小さい声でフィズに謝罪した。
「……すまない」
「だろ? だから、やっぱり俺に入れさせて」
フィズはそう言うと満面の笑みを浮かべて、カルナラの顎を少しだけ上に持ち上げカルナラの唇に自分の唇を素早く重ねた。
驚いて少し開いたカルナラの口内に遠慮なくフィズの舌が侵入する。
フィズの舌はカルナラの口内で執拗にカルナラの舌を追い回した。
やがてカルナラの舌は追いつかれフィズの舌に絡め取られる……。
いつの間にか2人は貪りあうように何度も角度を変えては互いに舌を絡ませ、キスをしていた。
「……っ、ん……ぁ」
キスの合間に洩れ出る喘ぎ声は、もうどちらのものかも区別がつかないほどに、2人は激しいキスを繰り返す。

「へー、2人して俺に隠れて何やってるのかな? 職務もほったらかして、楽しそうだね」
突然2人の足元から冷ややかな声がかけられた。
「うわっ、陛下!! いつからそこにいらしたんですか?」
フィズが驚いて足元を見ると、なんとそこにはシザークがしゃがみ込んで2人の様子を見上げていたのだ。
シザークの表情はいかにも面白くなさそうに歪んでいたが、あえて引き攣ったような作り笑いを浮かべて冷たい視線を2人に送っていた。
「シザーク!! これには深い訳が……」
そんなシザークの表情を見てカルナラの顔は強張り、勢い良くフィズの体を突き放すとシザークの前に屈み込んだ。
カルナラが跪いてシザークに手を差し伸べたが、シザークはその手を振り払い立ち上がった。
その表情は冷たく、今までに見たこともないような冷徹なものだった。
「いい訳は聞きたくないなぁ、カルナラはさっさと中に戻ってよ。あ、准尉は引き続き朝まで見張りよろしく。言っとくけど次サボったら減給だからね」
シザークはフィズを一瞥すると、自分に手を振り払われショックで呆然としているカルナラの腕を引っ張って立ち上がらせ、部屋の扉を開けてカルナラをその中に押し込んだ。
そして自らも扉の中へと消えて行き、恐怖で固まっているフィズの目の前でその扉は閉まった。
また元の静寂な闇が、1人その場に取り残されたフィズを冷たく包み、フィズは力なくその場に座り込んだ。

フィズが冷たい廊下で座り込んでいる頃、室内ではシザークがカルナラをベッドに押し倒していた。
「俺にあんだけしておいて、まだやり足りないわけ? だったら、そう言えばいいじゃん。准尉になら声聞かれてもいいんだろ? だったら俺ももう遠慮しないから」
「シ、シザーク? ちょっと……、あ……っ」
シザークに押し倒されるがままカルナラの濃厚な夜は更けていった。
数分後にはまた洩れ聞こえてくる甘美な喘ぎ声……。

(……って結局、こうなるんだ……。俺って何か可哀想じゃない……? あぁ真剣に嫁さん探そう……、うん、それがいい……)

フィズはその声を聞きながら心に硬く決心し、1人で納得するように薄暗い廊下で頷いていた……。


――完――

******
あとがき
毎度毎度寸止めと言うか、消化不良でスミマセンm(_ _)m
これ以上濃厚なのは私には書けません……
BLとかノーマルとかの問題じゃなくって頭の中にあるエロシーンを、
言葉にする難しさに自分の力不足を感じてしまいます(;^_^A
って言うか、私の中のフィズのイメージってどうもお笑いよりなんですよ(笑)
ごめんね、フィズ……。どうか幸せになってね♪

蒼木
ネコのワニ



Copyright © 2002 竜棲星-Dragon's Planet
サイト内の展示物の無断転載や引用は禁止
No reproduction or republication without written permission.