「竜棲星-ドラゴンズプラネット」二次創作BL小説
制作--蒼木 紗夜様

何処までも広がる青空の下、1人の男が屋上のフェンスに寄りかかってタバコをふかしていた。
その男の名前はカルナラ。カルナラは空に向かって紫煙をゆっくりと吐き出した。
赤々と燃えている吸い先の灰が風に舞って散っていく。それをカルナラはボーっと眺めていた。
四月に入ってから暖かい日が続き、校庭の桜の木々も淡いピンク色の花を咲かせ賑わいを見せている。
この竜星学園にも春が来て、初々しい新入生たちが次々と桜の木の下、校門をくぐり一様に入学式が執り行われる体育館を目指して歩いていた。

「今日は入学式だったな……。いよいよあいつも高校生か……」

一服を終えたカルナラはフェンスに寄りかかったままの姿勢で、視線だけを校門のほうへと向けて一人呟いた。
カルナラの言ったあいつとは、彼の弟アルトダのことだ。
訳あって一緒に暮らしたことも会ったことも無い、ましてやその存在すら知らなかった血の繋がった弟。
校門を見つめたままカルナラはアルトダのことを考え始めた。
自分に弟が居ると聞かされたのは、この春休みのこと。
カルナラの部屋に遊びに来ていたダナヤ兄弟の兄、同級生のナスタが唐突に打ち明けたのだ。



「そう言えば、カルナラ。お前の弟が今年この学園に入学するんだってな?」

突然のナスタの一言にカルナラはもちろん、一緒に遊びに来ていたナスタの弟シザークも驚いた。

「なんだよ、ナスタ。カルナラに弟なんて居ないじゃん!! 俺、聞いてないよ」
「そうですよ、ナスタ。私に弟が居るなんて……」

2人の抗議を物ともせずナスタは、平然と話を続けた。

「そりゃ、お前が知らないだけだ。私の情報に間違いはない」
「自分の弟なのに知らない訳が……。……大体、その情報は何処から手に入れたんです?」

カルナラが納得いかない様子でナスタに食い下がると、ナスタは少し面倒臭そうに両手を挙げ、首を傾げてとぼけて見せた。

「情報の入手先に関してはノーコメントだ。でも、信頼できる筋からのものだ。間違いなくお前の弟が、今年この学園に入学する」
「……名前は? 名前は何て言うんです?」
「アルトダ・ガフィルダ。じゃ、俺はもう帰るけど、そのお荷物はもう少しお前が面倒見ていてくれ」

ナスタはそれだけ言うと、これ以上の詮索は受け付けないとでも言うように、立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
残されたカルナラは1人考え込み、今ナスタの言った名前を胸の中で反芻していた。

(アルトダ・ガフィルダ? そんな名前聞いたことが無い……。本当に俺の弟なのだろうか?)


「なぁ、カルナラ。ナスタの言ったことって本当なのかな?」

不意にシザークに話しかけられ、カルナラは驚いたような顔をしてシザークを振り返った。

「ヤダなぁ、何でそんなに驚いているのさ」
「いや、てっきりナスタと一緒に帰ったものだとばかり思っていたので……」
「ひでぇー、ナスタが帰り際に言ってたじゃん、そのお荷物は置いていくって。大体、俺は荷物じゃないって言うの!!」

シザークはカルナラが自分の存在をすっかり忘れてしまっていたことと、ナスタに荷物扱いされたことに腹を立て、プーッと頬を膨らませた。
その顔があまりにも可愛らしくて、カルナラは思わずシザークを抱きしめた。

「わっ、ちょっとカルナラ……」

抱きしめられたシザークはバランスを崩し、カルナラの腕の中に倒れこむような形ですっぽりと収まってしまった。

「シザーク……」

カルナラは自分の腕の中にすっぽりと収まってしまったシザークを愛しそうに見つめ、耳元でその名前を囁いた。
この竜星学園は全寮制の男子校であるために、女子との接触が殆どなく、思春期と言う多感な時期を迎えた男子にとって恋愛の対象や好奇心は、当たり前のように同じ寮に居る身近な男子学生に向けられていた。
カルナラにとってその恋愛の対象は、目の前に居るシザーク。
彼とは同級生のナスタの弟として知り合い、お互いに惹かれあって付き合い始め、ちょうど一年が過ぎようとしていた。

「……カルナラ」

カルナラの囁きに呼応するかのように、シザークは目を閉じた……。


******


鈍い音を立てて屋上の扉が開くと、そこにシザークがひょっこりと顔を出した。
どうやらカルナラを捜しに来た様で、シザークはカルナラを見つけると嬉しそうな顔をして近付いてきた。

「あ、居た居た。もうすぐ式が始まるってさ。カルナラ、スピーチするんだろ? セテ先生がすごい形相で捜してたぜ」

シザークの笑顔に思わずカルナラもつられて微笑む。
屋上に降り注ぐ太陽の光を浴びたシザークの笑顔は、カルナラには少し眩しかった。
カルナラは相変わらずフェンスに寄りかかったままの姿勢で手を額に当て、太陽の光を遮る様にして返事をした。

「あぁ、今行きますよ、シザーク」
「それじゃ、俺は他にも用事あるから先に体育館に行ってる。絶対さぼんなよ? お前を捜すように頼まれた俺まで怒られるんだからな」

手でカルナラの表情が見えにくくなったせいか、シザークは少し下からカルナラを覗き込んだ。
カルナラの表情がいつもと変わりないのを確認すると、シザークはそう言って今来たばかりの屋上の扉から、校舎の中へと戻っていった。
その後姿を見送りながらカルナラは微笑んだ。

「はいはい、大丈夫ですよ。セテ先生を怒らすと怖いのは、私もよく知っていますから」


******


無事に入学式が終わり、大役を終えたばかりのカルナラは再び屋上へと来ていた。
彼が此処に来たのには理由があった。それは入学式で見かけた自分の弟だというアルトダと少しでも話がしたくて、此処へ呼び出したからだ。
呼び出す場所は寮の自分の部屋でも良かったが、あそこは常にダナヤ兄弟や他の同級生などの出入りがあるため、落ち着いて話をすることが出来ない。
それならば人気の無いこの屋上は、話し合うにはもっとも適した場所のように思えたからだ。

(落ち着くんだ……。そう、本当に弟かどうか話して確認するだけじゃないか……)

緊張からなのかカルナラの鼓動は早くなり、気を落ち着かせようと徐にタバコを咥えた。
その瞬間、屋上の扉が鈍い音を立てて開いたのだ。その音に驚いてカルナラは咥えていたタバコを思わず落としてしまった。
開かれた扉からはアルトダが顔を出し、オズオズと外の様子を伺っていた。
辺りを見回してフェンスに寄りかかっているカルナラを見つけたアルトダは、少しホッとしたような表情を見せ、ゆっくりとカルナラに近付いてきた。

「あの……、カルナラ……兄さん?」

タバコを落としたままで、自分を見つめて固まっているカルナラに対し、アルトダは遠慮がちに声をかけた。
色白で華奢な体つきをしていて、メガネの奥の瞳は怯えた様に潤んでいる。
まるで小動物のようなアルトダを見たカルナラは、早鐘のように鳴り響く自分自身の鼓動を感じ少し戸惑った。
アルトダにはシザークみたいな太陽のような眩しさとは違った、純粋なキラキラしたものが内側に秘められている……。
そう感じたからなのか、カルナラは高鳴る胸の鼓動を抑えることも出来ず、しばらくの間アルトダを見つめたまま動けずにいた。

(胸が苦しく感じるのは、アルトダが純粋に見えるからなのか? 俺は……そんなに汚れてしまっていたのか?)

ふとカルナラの心に自虐的な思考がよぎり、
どうせ汚れてしまっているのならいっそのこと地の底まで落ちてみようか?
兄弟と言う禁断の果実を味わって見るのも悪くない。
それよりもコイツを……、この純粋そうなコイツを俺の手で汚してみたい――
と、どす黒い欲望が頭をもたげた。
そんなカルナラの思惑も知らず、アルトダは不思議そうな顔をしてフェンスに寄りかかったまま動かないカルナラの顔を覗き込んだ。
無防備に近付くアルトダの顔を、カルナラは両手でしっかりと捉えた。
不意に顔を両手で捉えられ、その顔に不安の色を浮かべるアルトダが見たものは、カルナラの熱く鋭い自分へと注がれる視線だった。

「カルナラ……兄っ……」

アルトダがその名前を呼び終えるより先に、カルナラはアルトダの顔をグイッと引き上げ、強引に唇を奪った。
会話の途中だったため開かれていたアルトダの口内に、カルナラは荒々しく舌をねじ込み口内を犯す。
自分の身に何が起きているのか理解できないアルトダは、抵抗もせず驚いて目を見開いたままの状態で固まってしまった。
そんなアルトダを見てカルナラは、一度唇を離し両手で捉えていた顔を開放した。

「…………」

「クックッ、メガネは邪魔ですね……。外してしまいましょう」

カルナラはゆっくりとアルトダのメガネを外した。
メガネを外されても抵抗を見せず、驚いて自分を見つめたまま固まっているアルトダに対して、カルナラは意地悪そうに微笑み、開放した両手を今度はアルトダの腰に回して引き寄せた。
下半身を密着させられ思わず逃れようと上体を反らすアルトダの唇を、再度カルナラが強引に塞ぐ。

「ん……くっ……」

唇を塞がれ息が出来ず思わず洩れたアルトダの吐息に、カルナラはますます自分自身を見失い深い闇へと落ちていった。
欲望の赴くままアルトダの口内を犯し、やがてアルトダの力が抜けその重みを体で感じると、ゆっくりと腰にまわした手を開放し、アルトダを抱えるようにしてフェンスに寄りかからせ、シャツのボタンを外していった。
一つ一つボタンが外されるたびに露になっていくアルトダの肌は白く、薄い胸板には淡いピンク色の乳首がカルナラからもたらされるキスの快感によって、少しずつその存在を主張し始めていた。
シャツのボタンが全て外され、剥き出しになった上半身を前に、ようやくカルナラはアルトダの唇を開放した。すでにキスだけで瞳を潤ませ抵抗する意志が無くなってしまったアルトダは、唇を開放されてもボーっとフェンスに寄りかかったままの放心状態であった。
それをよい事にカルナラはアルトダの耳元 にそっと息を吹きかけ、思わずビクッと仰け反るアルトダの反応を楽しみながら、その白い肌に朱の刻印を刻んでいった。

「くっ……はぁっ……」

アルトダの上半身は隈なくカルナラの唇で犯されていく……。
カルナラのキスに翻弄され、アルトダは腰から下に力が入らなくなり、フェンスだけでは体を支えきれなくなっていった。
カルナラはアルトダを正面から優しく抱きとめると、ゆっくりと脱がせたばかりのシャツの上にアルトダの体を横たえた。
刻印が増える度にアルトダの吐息は中心の熱を放出するかのように艶を帯び、それに呼応するかのように肌の色も淡くピンク色に上気してきた。
存在を主張し始めていた小さい頂は、今やカルナラの舌に蹂躙され開花したのか、ちょっとした刺激で全身を仰け反らせるまでに感度を上げていた。
すでに意識を手放していたアルトダが、不意に聞きなれた音を耳にして現実に引き戻された。
その音はカルナラがアルトダの制服のズボンを脱がすべく、腰のベルトを外している音だった。

「あっ……、な、何……?」

アルトダは自分の置かれた状況が飲み込めずそう呟き、力の入らない上半身をゆっくりと起こすと、ぼやけた視界の先には自分のベルトを外し、ズボンを脱がそうとチャックに手を掛けているカルナラがいた。
カルナラと目が合った瞬間、自分の置かれた状況がなんとなく理解できたのかアルトダは急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤に染めて熱を帯び潤んだ瞳で哀願するように、カルナラを見つめた。

「に、兄……さ……ん、や……めて」
「兄さん? 兄弟だと思うのなら恥ずかしいことでは無いだろ?」

恥ずかしさから身を硬くするアルトダの耳元で、彼のズボンに手をかけ脱がせながらカルナラは優しく囁いた。
その間もカルナラのキスの嵐は止むことなく、執拗にアルトダの白い柔肌に刺激を与え続け、彼の意識を再び快楽へと押し戻していった。
再び意識を手放して快楽に身を委ねたアルトダのズボンは、スルスルと抗うことなく脱がされてしまった。
ズボンを脱がされる際、カルナラの手がわずかばかりに膨らんだアルトダ自身に触れ、一気にアルトダのソレは質量を増した。
布越しからでもはっきりとわかるようになったソレに、カルナラの手が、口が近付いていき軽い刺激を与える。
腰の辺りのゾクゾクとくすぐったいような優しい痺れを感じ、アルトダは思わず甘美な声を漏らした。

「はっ……、ぁ……ん」

カルナラはまるで焦らすようにソレに軽い刺激しか与えず、アルトダの反応を楽しんでいた。
焦らされたアルトダは自分でも気付かないうちに更なる刺激を求めて腰をくねらせ、まるでおねだりでもするように自身のソレをカルナラの体にこすりつけていた。
「悪い子だな……、もっとして欲しいのか? それならちゃんと口で言わなきゃ。どうしたいんだ?」
カルナラは布越しにアルトダのソレに軽いキスをしたあと、口角を釣り上げたような意地悪な微笑を浮かべてアルトダの耳元でそう囁いた。
とっくに意識を手放している上、刺激を欲しているアルトダは、己の欲望に対し素直になり、恥ずかしそうにしながらもカルナラの耳元で吐息交じりの小さな返事を返した。

「お……願い、も……ぅ、いき……たい……」
「……いい子だ」

そう言ってカルナラはアルトダの耳にキスをして、彼が身につけていた最後の一枚をゆっくりと脱がせた。
質量を増していたアルトダのソレは、不意に外気に晒されたことにより、いっそう実を硬くし天へと威きり立つ。
剥き出しになり硬度をましたソレをカルナラは手で優しく掴み、先端の刺激に敏感な部分にチュッと音を立てて優しく口付けた……。

「あぁ……っ、……ん」

たったそれだけの刺激に、アルトダの口からは耐えられず嬌声が上がる。
アルトダの嬌声に気を良くしたカルナラは、もう一度軽い口付けで刺激を与えた後、ゆっくりとソレを根元まで咥えていった。
一糸纏わぬあられもない姿になっても羞恥心が起こることも無く、ただ純粋に刺激だけをアルトダは求め続けた。
カルナラの口内は生暖かく、内壁は柔らかで心地よく、舌は絡みつき、容赦ない刺激が次々とアルトダを襲った。

「んっ……ぁ、あ……」

クチュクチュと卑猥な水音がし始める頃には、アルトダはすでに限界に近いのか一層艶を含んだ嬌声を上げ、腰が自然と持ち上がりカルナラの口内の更に奥へと刺激を求め、内腿の辺りをヒクヒクさせ始めた。
そろそろ限界か?――とカルナラがアルトダの様子を確認すると、アルトダは朦朧とする意識の中で、口を半開きにし、潤んで焦点の合わなくなった瞳で、カルナラを見つめていた。
その艶かしい表情にカルナラは欲情し、徐々に硬くなり主張し始めた自身のソレを意識した。
自分自身の欲望も煽るかのようにカルナラはわざとジュルジュルと淫らな音を立ててアルトダのソレを吸い上げ、舌先を硬くさせ裏筋を茂みのほうから上へと舐め、先端の割れ目へと刺激を与えた。

「あーっ……ん、あぁ……っ」

その刺激にアルトダの体は耐えかねて、ビクンと大きく弓なりに体を仰け反らせた。
先端から垂れ流されていた透明な液体が徐々に粘稠度を増し、白濁した液体が溢れ出てくる瞬間に、再びカルナラはソレを口に含んだ。
カルナラの口内でアルトダのソレはドクドクと脈を打ち、一気に白濁した苦い液体を放った。
カルナラがその液体を口に含んだまま、ゆっくりと全てを出し終え力を失くしつつあるソレを吸い上げ、ようやく口から開放した。

カルナラが口に含んだ苦い液体を飲み干す様を、アルトダは白く霞んだ意識の中で見ていた。
はじめての経験だった為か、カルナラの行為が上手かったのか、アルトダは体に痺れたような余韻を残し、全身から力が抜け落ちてしまい、体が思うように動かなかった……。
春先の穏やかな気候で、暖かい陽射しが降り注いでいても、さすがに裸のアルトダには少し肌寒く感じたのか、アルトダの体は本人の意思に関係なく小刻みに震えていた。
それに気づいたカルナラはアルトダの体を抱き起こし、フェンスと体の間に出来た僅かな隙間に強引に入り込み、両足を広げた形で腰を下ろすと、アルトダの体を後ろから抱きしめた。

「これなら寒くは無いだろ?」
「あ、ハイ……」

まだ気だるさの抜けないアルトダは後ろから抱きしめられ、その素肌にカルナラのシャツ越しの体温を感じ、頬を赤く染めながら小さな声で返事をした。
一体何をしていたのだろう?
どうしてこんなことになってしまったのだろう――

と、アルトダは理解しがたい先ほどまでの甘美な出来事を思い出し、再び体の奥に火照った熱を感じてしまった。
羞恥心から俯き押し黙ってしまったアルトダを、カルナラは優しく抱きしめる振りをして、アルトダの体に自分の下半身を押し当てた。
アルトダは腰の辺りに押し付けられた硬く質量を増したカルナラのソレを感じて、一瞬驚いて身を引こうと体に力を入れた。
しかしまだ思うように動かない体は、いとも簡単にカルナラに抱きすくめられ、逃れることが出来なかった。
逃れられない力強いカルナラの腕に、アルトダの意識ははっきりとしてきて、いい知れぬ不安を感じた。
そんな不安もカルナラの優しい笑顔を見れば解消されるであろうと、アルトダはその力強い腕に抱きしめられたままの状態で首だけを動かし、カルナラの顔を見た。振り返ったアルトダの目に入ってきたのは優しい微笑ではなく、どす黒い欲望をその緑色の瞳の奥に隠し、口元を歪めて笑っているカルナラの顔だった。その表情を見た途端、先ほどまで体の奥に燻っていた熱が一気に冷め、アルトダは迫りくるいい知れぬ恐怖に身震いした。

「……どうした? まだ寒いのか? ……ならば、もっと暖めなければ……」

抑揚も感情さえも篭っていない声でそう言ったカルナラの口角が、少しだけ上がり引きつったような笑みを浮かべた。

「……カルナラ兄さん?」

少しでもこの恐怖から、カルナラから逃れようと、アルトダが体を捻り前方へ逃れようとすると、それまで力強く自分を抱きしめていたカルナラの腕が急に緩められた。その反動でアルトダの体は前のめりに倒れこみ、体をくの字に曲げたような不自然な体勢になった。
無防備で露になっているアルトダの白くて滑らかな体の外側をかたどる細腰のラインが艶かしく、それでいてまるで穢れを知らないような珠肌を前にして、カルナラはその全てを蹂躙し汚れていく様をこの目で見たいと思い、深く黒い欲情にかられた。
カルナラは両手を伸ばし目の前に倒れているアルトダの細腰を掴むとグイッと力任せに自分のほうへ引き寄せた。そのせいでアルトダは、四つん這いで腰を高く突き上げた、まるでネコが伸びをするような恰好になってしまった。

「……っ!!」

予想しない事態の展開に、驚いて声も出せずにいるアルトダの尻は、寒さからなのかそれとも恐怖心からなのか小刻みに震えながらも、その全てをカルナラの前に惜しげもなく曝け出していた。
カルナラは掴んでいた細腰から手を離し、尻朶を両手で押し広げるとその中心にある小さな蕾に口付けた。

「ひゃっ……ぁ!!」

いきなり秘所に柔らかく生暖かい刺激を受け、アルトダは思わず声をあげて腰を引こうとした。
しかし非力な彼が、鍛え上げられた肉体を持ったカルナラの力に勝てるわけも無く、そのカルナラに両手でしっかりと尻を固定されてしまっている今、逃げる術などあるわけが無い……。
アルトダはカルナラにされるがままになってしまった自分の非力さを呪い、羞恥心と恐怖とでない交ぜになった感情は瞳を潤ませ、当ても無い助けを求めてただひたすらに屋上の扉を見つめるしか無かった。
カルナラの舌によって秘所のみならず、その周辺へも隈なく刺激を与えられ、内腿を指でなぞられると、次第にアルトダの中の恐怖心は薄らいでいき、それと同時に腰の辺りにゾクゾクと粟立つような感覚が襲ってきた。
初めて経験するその感覚は、アルトダにとって決して不快な感覚ではなかった。それどころか体の方がその感覚を欲しているかのように、精を放出し萎えていたアルトダ自身に再び変化をもたらせ始めたのである。
アルトダのソレは少しずつ硬さを増し遠慮がちに頭をもたげた。

「はぁ……んっ」

思わずアルトダの口を付いて出た女のような嬌声に、それまで執拗にアルトダの秘所の周囲を貪っていたカルナラの動きが止まり、掴まれていた尻も開放された。

「……?」

高まり始めた欲情を急にそがれた様な気分になり、アルトダは四つん這いのままの姿勢でカルナラを振り返った。
その瞳には最早怯えた様な色は無く、逆に内側から湧き上がる熱に浮かされているように見えた。
その瞳をカルナラは楽しそうに見ながら、取り出したローションの蓋を片手で器用に開け、もう片方の手へと垂らした。
透明なジェル状の液体はカルナラの手から少し零れ落ち、アルトダの素肌にひんやりとした刺激を与えた。
一瞬ブルッとアルトダの体が振るえ、身を縮こまらせようとしたが、
「おっと、まだ逃げられちゃ困るんだ……」
と、カルナラに再び捉えられてしまった。
ひんやりと肌を伝うジェルの刺激と捉えられたことにより、アルトダの心に再び恐怖が襲ってきた。

「い……やだ……」

ブンブンと首を左右に振り、必死で捉えられた腕の中から逃れようとするアルトダの秘所に、ジュルッという音と立ててカルナラの指が遠慮なく侵入してきた。

「や……っ、ぁ……ん!!」

いきなり入り込んできた指の感触に、ジェルを付けていたせいか痛みは無かったが何とも言えない異物感を感じ、吐き出そうとアルトダの体は自然と力が入ってしまう。
力を入れられた事でキュッと口を窄めてしまった秘所は、押し入れたカルナラの指を強く締め付けた。

「くっ、さすがに指一本でもきついな……。もっと力を抜いて、そう、口でゆっくりと息を吐き出すんだ……」

優しいカルナラの声色に、少しだけ恐怖心が和らいだのか、カルナラの指を締め付けていた力がゆっくりと抜けていく。
力が抜けたことを指の感覚で確認すると、カルナラは指を動かし始めた。
カルナラの指の動きにグチャグチャと内臓をかき回されるような不快な感覚を覚えたアルトダの意思に反して、内側の熱っぽい粘膜はカルナラの指に絡みつき、更に奥深くへと誘導しているようだった。奥へと進んでいく不快な指の感覚に耐え切れず、アルトダが再び体に力を入れようとした瞬間、その刺激は前触れも無く突然訪れた。

「……やっ……ああっ!!」

アルトダの体が大きくビクンと飛び跳ねた。どうやらカルナラの指が一番敏感な部分を捉えたらしい……。

「……此処か……」

カルナラは満足気にそう呟くと、その部分を軽く指先でなぞってみた。
カルナラの指が動くたびに連動するかのようにアルトダの体は嬌声を上げて跳ねる。
次々と襲ってくる今までに味わったことの無い快感に、アルトダの視界は白く霞み、意識を失いそうになった。
完全に力の抜け切った秘所は一本ずつ増やされていくカルナラの指に、今ではすっかり解されていた。

「……そろそろ……か?」

カルナラはそう呟くと空いている方の手で器用にズボンのボタンを外し、チャックを下ろした。
カルナラはアルトダの秘所から指を引き抜き、すっかり硬くなった自身のソレをズボンの中から取り出すと、先端へ上からたっぷりとローションを垂らした。カルナラは自らの手で自身のソレの根元をしっかりと握りに、もう片方の手でローションを広げるように2、3度上下にスライドさせた。
スライドさせたことにより準備万端とばかりに威きり立つソレを、カルナラは引き抜いたばかりのアルトダの秘所へと押し付け、一気に貫いた。

「ひ……ぃっ!!あぁっ!!」

指とは比べ物にならない、押し入ってきた圧迫感に、アルトダの体は悲鳴を上げた。
しかしカルナラの動きは止むことなく、アルトダは突き上げられ内臓を内側からかき回されるような酷い気分に襲われた。
思わず力を入れそうになるアルトダに対して
「大丈夫、力を抜いて……。さっきみたいに時期に良くなる……」
と、カルナラはアルトダの背中に自分の胸を重ね優しく抱きしめた。
自分の囁きにアルトダがコクリと頷くのを確認すると、カルナラはゆっくりと腰を前後に動かし始めた。

カルナラの腰が動くたびに引き裂かれてしまいそうな痛みと、引き摺られ内蔵が一緒に飛び出してしまうのではないかと言う恐怖感がアルトダの中に沸々と湧き上がってきた。
しかし、それにも次第に慣れてきて、吐き出してしまいたい圧迫感と引き裂かれそうになる痛みとともに、アルトダは腰の辺りから背中にかけてゾクゾクと甘い痺れを感じて始めていた。
カルナラの腰が動く度、繋がれた部分からグチュッグチュッといやらしい音が聞こえ、その音がアルトダの意識を更に追い詰めた。
アルトダは聴覚からも刺激を受け、全身がまるで性器のように過敏になっていったのだ。

「……い……やぁ……っ!! ……んぁっ!!」

カルナラはまるで何かを探るように、アルトダの中を浅く深くと抉ってくる。やがて見つけ出したソコに辿り着いた瞬間、アルトダは目の前でフラッシュがたかれたように視界が白く霞み、体には電流が走った。
一際大きな嬌声を上げアルトダの体は弓なりに仰け反った。
絶頂が近いのかアルトダは熱に浮かされた瞳の端に小さい雫を浮かべて嬌声を上げ続け、自らも腰を振り更なる快感を得ようともがいていた。
アルトダの分身は限界寸前でパンパンに膨れ上がり、先端からは涎みたいな透明の先走りを垂れ流していた。
それを見かねたようにカルナラの手が背後からアルトダのソレにそっと添えられ、優しく上下に扱き出した。
ローションによるものなのか、自らの先走りに寄るものなのか、アルトダのソレはカルナラの手の中で抗うことなくスムーズな上下運動を繰り返された。
その刺激に耐え切れないのかアルトダは内腿をヒクヒクと小刻みに痙攣させ、繋がっている部分も締め付けを強くした。
カルナラ自身も入り口のきつく締め付けられる感覚や、容赦なく絡みついてくるアルトダの肉壁に刺激され、その内側の熱に浮かされ、溶かされそうになっていた。ともすれば快感の渦に飲み込まれ、飛んでいってしまいそうな意識を辛うじて繋ぎとめ、必死に腰をアルトダへと打ちつけているという余裕の無い状況に追い込まれていた。
兄弟と言う禁断の果実は、カルナラが想像していた以上に甘く官能的で、一歩踏み入れた瞬間からすでに、カルナラには余裕など無かったのかもしれない……。
カルナラの腰の動きが落ち着き無くペースを上げた。次の瞬間アルトダは白濁した液体を放ち、意識を消失した……。

「あっ……ぃ、イ……クッ!!」

「くっ……、あぁ……っ!!」

2人はほぼ同時に絶頂を迎えたのだ。
意識を失ってその場に崩れ落ちてしまいそうになったアルトダを、カルナラは背後から優しく抱きとめた。


全てのコトが終わって、アルトダの意識は完全に断たれた。
カルナラは脱ぎかけのズボンをそのままで、下半身を剥き出しのまま、上着の上に座り込んだ。自分の横でしわくちゃになった衣類の上、意識を失くし横たわっているアルトダの柔らかそうな髪を、カルナラは指で愛しそうに玩んでいた。
小さく丸まっているアルトダの体が、寒さのせいか時折小刻みに震えているため、風邪をひいては困るとカルナラは自分のシャツを脱いで、体温を分け与えるかのようにそっとかけてやった。
カルナラが側に置いてあったアルトダのメガネを持ち上げ、メガネ越しに傾きかけた夕日を見上げていると、不意に屋上の扉が開き、見慣れた人影が目の前に現れた。
その人影はカルナラの良く知る人物、今朝も自分を捜しにこの屋上まで来てくれた恋人のシザークだった。
突如現れた目の前のシザークに、カルナラは酷く動揺した。カルナラの横ではカルナラのシャツをかけてはいるが、一糸纏わぬあられもない姿でアルトダが果てているのだ。
カルナラ自身も剥き出しになっている下半身を隠しようもなかった。

(こんな現場を押さえられてしまっては、いい訳が……)

しかし、顔を真っ赤にして自分を見ているシザークを目の前に、カルナラは本当のことを言うことも出来ず、とっさに思いついた苦し紛れのいい訳を口にしていた。

「シザーク……。これには深いわけが……。そ……の、本当に兄弟か確かめていたんだ。そう、兄弟の確認って言うあれですよ……」
そんな意味不明ないい訳が通用するはずも無い――と、半ば諦めかけていたカルナラに対し、シザークはにっこりと微笑んだのだ。
「なぁんだ、そっかぁ。俺、てっきり浮気現場に踏み込んじゃったんじゃないかって、すげぇ焦った。んで、そこで寝てるのがアルトダ?」
「……えっ? シザーク?」

あっさりと笑顔でそう言い放つシザークを目の前に、カルナラの頭の中はますます混乱した。
しかし、そんな困惑顔のカルナラを気にも留めずに、シザークはカルナラの横に座って、甘えるようにカルナラに凭れかかり話を続けた。

「要は、あれだろ? 兄弟間の。俺もカルナラと付き合う前によくナスタに『兄弟なんだからあたりまえだ!!』ってやられてたもん」
「へ? 一体何を? まさか……」

混乱した頭を整理し、何とか話を理解しようとするカルナラの脳裏を、ふと嫌な予感が掠めた……。

「今カルナラとアルトダがやってたことだよ。恋人が出来るまでは、その……、兄弟でお互いに……処理するって言うか……。あぁ、もう何てこと言わすんだよ、カルナラ!!」
「…………(ナスタ!!)」

カルナラの予感は見事に的中した……、しかし自分のしたことを棚に上げナスタの行ないを責める事も出来ず、カルナラは悔しさに顔を歪めた。
そんなカルナラに気付かずシザークは優しく微笑みかけ
「早くズボンくらい履いたら?」
と声をかけた。
屈託のない眩しい笑顔を浮かべるシザークの背後に、勝ち誇ったような笑みを浮かべているナスタの姿がカルナラには見えた気がした……。



******
あとがき
ありえない……、精も根も尽き果てました(笑)
初めてまともに書いた18禁小説がいきなりBLって、どうよ。
しかも挿○しちゃっているじゃないですか……(;´Д`)
その上大好きなはずのカルさんが、真っ黒( ̄□ ̄;)!!
↑エロ黒いカルさんはきっと私の願望♪
何はともあれ出来上がりましたよ(;^_^A
リュウカさんのご期待に沿えるものになりましたでしょうか?
とりあえずよく頑張った自分を誉めてあげたい気分です……。

ネコのワニ

風音 或人(サイト)様からイメージ画いただきました♪



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