『若きカルナラの苦悩と疑問』18禁(♂×♂)


「竜棲星-ドラゴンズプラネット」二次創作小説
制作--深水晶様




私は最近自分の劣情と闘っている。

そう、既にそれを抑制するなどというレベルの話はないのだ。
彼を、シザークを押し倒したくて押し倒したくてたまらない──それもいつでもどこでも、他に誰がいようと関係なく──だ。
無論、私の立場からしても、彼の立場からしても、至極まずいし、とんでもないことだ。
他の人間に見られるのもまずいが、それ以上にそんなことをしてしまえば、いくら心の広いおおらかなシザークでも、私を嫌い、一生許してはくれないだろう。恐ろしいことだ。

何故なんだ? 何故そんなにすぐ発情する? 私の脳内思考がおかしいのか? それともそれほどまでにシザークが魅力的で扇情的?
もしやこれは、もしかせずとも『たまってる』とかいう状態なのか!?
抜いても抜いても、まだ足りない。これじゃ自慰行為を覚えたての十代の思春期の子供よりもわけが悪いし、たちが悪い。

ああ、シザーク。何故にあなたはシザークなんだ。
自分より遙かに身分の高い、雲の上の人。
本来ならば、決して私などが触れてはならない人。
あなたがただの平民ならば、今すぐにでもあなたをさらって鳥籠に閉じこめて、誰の目にも触れさせずに、朝から晩まで抱きつくすのに。

……いかんいかん、執務中に私は一体何を考えているのだ。
顔に出たりはしなかっただろうか?


「どうした、カルナラ。仏頂面して。何かイヤなことでもあったのか?」

全然ばれていないようだ。
……なのに、喜ぶよりも、どこか哀しく淋しい、やるせない気持ちになるのは何故だろう?

「……おい、カルナラってば。返事くらいしろよ?」
「すみません、陛下。ちょっと血迷ってまして」
「え? 血迷う?」
「ああ、いえ。違います。じっと迷ってたんです」
「何をだよ?」
「……自分の仕事のことでです。どうぞ、おかまいなく」

すらすら嘘やでまかせが出てくる。そんな自分がとても空しく哀しい。

「……まあ、いいか。カルナラがおかしいのは、今に始まったことじゃないしな」
「えっ!?」

思わず絶句した。

「どっ……どういうことですか!?」
「言葉通りの意味だろ? お前最近ずっとおかしいじゃないか。最初はすごく気にしたけど、最近じゃもう慣れっこになっちゃったしさ。だって、お前、おかしいけど、元気そうだし」
「…………」

おかしくさせているのは、誰だと思ってるんですか、という恨み言は、面と向かってはとても言えない。

「まあ、気になるけど、俺に言う気はないんだろ? だから、ま、頑張れ、としか言ってやれないんだけど」

……私が頑張っても、本当に良いんですか?と聞きたい。
ものすごく聞きたい。
あなたがイヤだと音を上げるまで、あなたを貫き、嬌声を上げさせて…………ってだから!
私は一体何を考えているのだ!!
これでは色情狂じゃないか!!

「……おい、カルナラ? なんでそこで落ち込むんだ?」
「すみません。頼むから、もう何も言わないでくれませんか?」
「……お前の性格って判るようで、ちっとも判らないよ。オレに判るように説明してくれるとありがたいんだけど」
「そこまでは私の仕事ではありません」
「じゃあ、プライベートで頼むと言ったら?」
「……嫌です」
「…………」

シザークは大きく目を見開いて、私を凝視する。

「……イヤ!? ちょっと待て!! カルナラ!! そういうのって……アリか!?」
「仕事ならば、陛下のご命令を拒否することはできませんが、プライベートならば受諾と拒否の選択の余地があるはずです」
「じゃあ、オレの命令だと言ったら?」
「ですから、そこまでは私の職務にはありません」
「〜〜っ!!」

シザークは悔しそうに歯噛みして、私を見上げた。
その顔ですら、私を誘っているように見えて、ずきりとする。

「……覚えてろよ、カルナラ」

恨みがましい口調と視線で私を見るシザークの目は少し潤んでいた。
シザークの泣き顔は、『あの時』の表情を思い起こさせて……。

「……カルナラ。どうして前屈みになってるんだ?」

う。

「……す、すみません。腹が痛いみたいで」

我ながら苦しい言い訳だ。

「えっ、ちょっ、だ、大丈夫か? 平気なのか!? カルナラ!!」
「……申し訳ありませんが、これで退出してもよろしいでしょうか?」
「ああ、勿論だ。誰か人を付き添わせようか?」
「いえ、結構です。一人で行けます。お気遣いありがとうございます。シザーク陛下」
「陛下はよせ」
「でも、あなたが国王陛下であるのは、事実ですから」
「……腹が痛くても、減らず口は健在なんだな」
「職務です。では……失礼させていただきます」
「ああ。ゆっくり休め。午後は休んで良いから」
「え? いや、でも」

仮病に休暇は貰えない。

「とにかく休め。良いな?」

シザークの目には有無を言わせぬ力があった。
これを拒否すれば、お前を切るといわんばかりの。

「…………」
「では、退がって良いぞ」

複雑な思いで、私は頭を下げ、厚情に対する礼を述べて退出した。

自室に帰っても悶々としていたので、恥ずかしながら自慰行為に耽ってみたが、治まらない。
いや、一度は治まるのだが、シザークのことを思い出すと、また熱くなるのだ。
四回目の放出を拭うと、さすがに落ち込み、これでは駄目だ、と思い悩んだ。

普通、男は、こういう時、どういう行動に出るか。
恋人や妻がいて、それを許してくれるのならば、そういう対象を押し倒して──いや、待て。
彼女達は気まぐれで、必ずしも相手の欲望に応えてくれるとは限らない。
どうしても駄目だとなると……。

……待て。『浮気』というのは違うだろう。
それに相手にも失礼だ。私はシザーク以外にそういう感情を抱けないのだから。
性欲処理だけのために、相手を抱くなんて、そんなことはできない。
まあ、それを処理するための商売というのが、古くからあるわけだが……。
商売? ……つまり娼館だ。
そのほとんどは男相手の商売で、商品は女性が多いのだが、中には少年──男も混じっている。
そう言えば、以前フィズが冗談交じりに語ったその手の話の中で、とびきりの美少年がいるということで人気を博しているらしい娼館の話を聞かなかったか?
その時は別段どうということもなく、単なる笑い話で終わったのだが。


……待て。冷静になれ。
……本当にそんないかがわしい場所で、いかがわしい男を抱いてみようと思うのか?
少し自暴自棄になっていないか?
それはまあ、国王陛下であるシザークに対して劣情を抱いて押し倒すよりも、穏やかでたぶんより一般的──じゃないだろうかと思う──なことだとは思うが、私はそこまでして、自身の性欲を満たしたいのか?
それは人として、王室警護のSPとして、あるまじき行為なのではないだろうか。
いや、別に私はそれを稼業としている人達を軽蔑しているわけではない。
職業に貴賤はないのだ。望んでその職務についているとは、思わないし、恥ずべきはそこまでして、情欲を金でむしり取って処理しようとする人間の浅ましさであり……。

「…………」

これは、自己弁護だな。
そして虚栄で、傲慢な理屈で、狭量だ。
知りもしないものを、さも熟知していることのように語ることほど、恥ずかしいことはない。
そしてたぶん、私は、興味があるのだ。

なんということだ。
これが男の性というものなのか?
シザークと、それ以外の男がどう違うのか、などと──そんなものは比べられるはずがない。
比較の対象になるはずがないのだ。

私は女は既に知っている。
男も──知らないというのは嘘だ。
でも、彼と他の誰かを比べたことなどはない。そんなことは恐れ多い。恐れ多い、と思っているのに。

一度気になり出すと止まらないのは、持って生まれた性分だろうか?
いや、そんなもののせいにすべきではない。私は矮小な男だ。恥ずべき男だ。
シザークに大嫌いと罵られて、軽蔑され、唾棄されても仕方がない。

……そうだ。その通りだ。
今の私は誰でも良いから、『誰かとする』ことばかり考えている。
シザークだけではない。母に、弟に、顔向けできない鬼畜の所業だ!
私はなんと低俗で、卑しい男なのだ。自分でも情けなくて、泣きたくなる。


だが。……確かめてみたい、という気持ちが、好奇心もあって。

そしてついに……堕ちた。












「お客さん、初めて? サービスしとくよ。あなた、オレの好みだから」
「…………」
「ちょっとぉ、そんな仏頂面するのやめてよ。折角楽しみに来たんだから、笑ってくれなきゃ」
「そ、そうですね」
「きゃははっ。やだ、お客さん。緊張してるんですか? やだなぁ、そういう初々しいのって。嬉しいけど、こっちまで恥ずかしくなっちゃう」

やはり、やめておけば良かった、と思う。

ここは娼館。
目の前にいるのはその男娼。
……だが、シザークとは似てもにつかない。
そんなことは当たり前だ。来る前から判っていたことではないだろうか。見目が悪いことはないが、赤毛の髪も、そばかすだらけの顔も、ガリガリの手足も、シザークとはあまりにも違いすぎていた。

「……本当に、十八歳?」

どう見ても十四歳だ。

「そうだよ、お客さん。それとも、もっと子供の方が良かった?」
「…………」

そんな恐ろしいことを真顔で言わないで欲しい、と思う。

「……この娼館には君より年下の少年がいると言うのか?」
「いるよ。でも、一度部屋に入ったら、交換はできないからね。たっぷり楽しませてあげるから。ほら、服脱いでよ。それとも、オレに脱がせて欲しい?」

なんだか逃げ帰りたくなったが、それもどうかと思うので、チップを握らせる。

「ありがとう! まだ何もしてないのにくれるの!? 大サービスしとくね!!」

少年は目をきらきらさせて、私を見上げるが、思わず引いてしまう。

「あっ……その、もう……っ」
「遠慮しなくても良いよ! まず口でしてあげる!!」
「あっ、いや! もういいから!!」
「何遠慮してるんだよ、ほら、座って!!」
「〜〜〜〜っ!!」










勃たなかった。
結局最後まで勃起しなかったのだ。
ちなみに少年男娼は私を『イ○ポ』だの『タ○なし』だの言って罵った。


……もしかせずとも後悔している。
そもそも、私の性格で、ああいうところで理性を放棄してコトに及ぶことなどできるはずがなかったのだ。

しかし、私は本当に『イ○ポ』で『タ○なし』なのだろうか。
もしや、自慰行為のやりすぎで、できない身体になってしまったのだろうか?

そんなバカな。

恐ろしい想像だ。あまりに恐ろしすぎる想像で、眩暈がした。頭痛がする。耳鳴りまでしてきた。
……どうしよう。
私は本当に不能になってしまったのか?
あまりに思い詰め過ぎて、一生できない身体になってしまったのか?
それはむごい。あまりにむごい。
ただ、私はシザークとしたいだけなのに。


そこへ。






「おーい、カルナラ。元気してるかー? 腹の痛みはどうなった?」

シザークが現れた。

「……シザーク」
「え?」

驚いたように、シザークは私を見た。

「……助けてください! シザーク!!」
「えっ、何を? ……って、ちょっ、ちょっと!!」

私はシザークの腕を掴み、ベッドの中に引きずり込んだ。

「なっ……なっ……何考えてるの!? カルナラ!! オレまだ鍵閉めてなっ……!!」

その愛らしい唇を塞ぐ。

「ふっ……ぐっ……んっ……!」

最初は抵抗していたが、彼の舌先をちろりと舐めるとおとなしくなった。
そうしてその甘く柔らかな唇を味わいながら、右手でボタンを外し、胸へと指を滑らせた。

「ぁっ……ふっ……う……っんっ……!」

シザークはびくり、と背中を震わせ仰け反った。
一度、唇を離し、もう一度口付ける。

「あっ……んっ……カル……!」

そうしながら、下腹部へと指を這わす。ベルトに手をかけると、びくりとシザークの身体が震えた。
ベルトを外すために、一度顔を上げると、シザークの瞳は潤んでいた。

「……何、発情してるんだよ」

シザークは言った。

「それに、なんで『助けて』って」
「……私は、『イ○ポ』になってしまったんです」
「え? 何言ってるんだ? じゃあ、その両足の間にあるその塊はなんだって言うんだ?」
「え?」

どきりとして、自分の股間に目をやると、そこには、見慣れた隆々とした盛り上がりが。

「!!」
「……お前、時折、ものすごくバカなこと言うよな? 一体何を考えてるんだ? オレにはちっとも理解できないよ」

そう困ったように言うシザークの下腹部に顔を埋めて。

「ちょっ……なっ……!?」

素早くベルトを緩め、手早く衣類を緩めると、中から彼のものを取り出し、口に含む。
狼狽する彼には構わずに、それを吸い上げ、舌で撫で回した。

「……ぁっ……はっ……!!」

彼のそれも、十分すぎるほど固くなっていた。
それが、私に対する彼の答えだという気がして、深い喜びを覚える。

自分一人ではないのだ、と。

「ちょっ……だからっ……鍵っ……!!」

そんなことは、どうでも良かった。
彼の高ぶりが、自身の勃起が、嬉しくて。
こんなことが、こんなにも嬉しいだなんて、今までちっとも知らなかった。
それは、自分を悩ませる煩わしいもので、本来必要ないものだと思っていた。
でも、それが無くなってしまえば、とても苦しく、惨めで、不幸せなことなのだ。
ならば、それを抑制しすぎるのは、不自然で、不健康で、あまり良くないことなのではないだろうか?

「だから鍵閉めろってば!!」

彼の声は、喜んでいる。
少なくとも、私にはそういう風に聞こえる。だから、私は返事の代わりにキスをした。

「あっ……ちょっ……バカっ……カルナ……ラ……っ!!」

下衣を、下着ごと引きずり下ろして、慎み深く小さく窄まっている入り口を指でゆっくりやんわりと撫でると、口の中のシザークが、ぴくりと跳ね上がった。
ほら、喜んでる。
その応えに、私は嬉しくなって、舌をより使って、彼をしごき上げる。
そうしながら、指をずぶりと挿入した。
シザークは小さく悲鳴を上げるが、その苦悶の表情や声や呼吸は、私を煽るだけだった。
ゆっくりと指を出し入れしながら、ちゅぷちゅぷと音を立てて、舌と唇で彼を攻め上げる。

「あっ、ぁっ、カルナラッ……カルナラ……ッ! やっ、もう、出……っ!!」

その途端、口の中で爆発した。
そのどろりとした濃くて甘苦い液を、音を立てて飲み干すと、シザークは真っ赤な顔で私を睨め付けた。

「何すんだよっ!! バカ!!」

そんな顔にもそそられる。

「……好きです」
「え?」
「あなただけです」
「……カッ……カルナラ!?」

前からと、後ろから、どちらが良いだろうか、なんて。
さっきまでは思っていたけど。
もうそんな余裕など無い。すぐにでも、入れたい。

「ちょっ……目がマジ……っ!」

シザークの腕を取って、手首に口付け、起き上がろうと彼をそのままシーツの上に縫いつける。

「……カルナラ!?」

そして、彼の両足を大きく広げさせ、まだ慣れていないそこへ、挿入した。

「うっ……ぁあっ!!」

シザークは悲鳴を上げ、痛そうに顔を歪め、苦しそうに、喘ぐ。

「すみません」

そう一言告げて、腰をずん、と進めた。

シザークは高く悲鳴を上げる。
その声に、煽られて、私の『それ』は嵩を増した。

良かった……!
私は『イ○ポ』では無かったのだ。

彼にならば、こんなに反応する。これほどの喜びはなかった。
大丈夫。私はまだ男として終わっていない。
全身に満ち溢れる欲望と熱情に、涙こぼれそうなほどに感謝する。
……生まれてきて良かった!
二度と娼館には行かない。男娼を買おうなどとは思わない。
私には、彼が、シザークさえいてくれれば良いのだ。
それ以外のことなど考えてはいけないのだ!


理性と抑制を手放し、歓喜と熱い欲望、迸る情欲に身をまかせ、思う様シザークを貪った。
彼は、高く悲鳴を上げ、苦しそうではあるが喜びを滲ませた喘ぎを上げ、私と彼は共に果てた。

「……だから、鍵を閉めてからにしろって言っただろ!!」

終わった途端、殴られた。

「しかし、あなたも喜んで……」
「喜んでなんかないっ!! だ、大体、カルナラ!! ひ、人が心配して顔見に来たら、一体なんだってこんなっ……!!」
「でも気持ちが良かったでしょう?」
「……お前、そういう性格だった? なんか悪いもの食った?」

言われて、昼間の悪夢のような『コト』を思い返して。

「……そうですね。そうかもしれません」

本当のことは、口が裂けても言えない。
たぶん、彼は激怒するだろう。
私が頷くと、シザークは微妙な表情になり、顔を歪めた。

「そうか。じゃあ、今後は気を付けろよ、カルナラ。でも、な?」
「はい」
「……そのとばっちりをオレにぶつけるのはやめてくれないか?」

とばっちり?

「迷惑だから」

……迷惑。

「……迷惑、ですか?」

おそるおそる尋ねると、シザークは神妙な顔で頷いた。

「うん、迷惑」




そして、私は落ち込み、そして悶々と悩んだ。

……性欲を抑えるために有効な方法とは何だろうか。
そして、『迷惑』でないセックスとは、いかなるものか。
資料室や図書館などの文献を漁っても、それを導き出す答えはどこにも見つからない。どうすれば、解決できるというのだろう。

迷惑。……迷惑らしい。
何を持って、どこがどう、どういう風に迷惑なのか、本人に尋ね返すべきだっただろうか。
答えは見つからない。
どうしたことだ、と思う。どうしたものかと心底思う。

しかし、こんなことは、誰にも相談できるはずがなかった……。


 深水 晶様


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