〜漢たちの熱き戦いU 新たなる敵〜




>漢たちの熱き戦いTはこちら 全9ページ(漫画?)









「司令官」
「ん? どうした?」
「最近、やけに静かじゃないですか?」
「まぁな。これくらいの時期はいつもそうだ」
「そうなんですか?」
「…? あぁ、君は今年からこの船に配属されたんだったな」
「はい」
「どうだ? 最前線に立つ心境は…」
「いろいろ聞かされてはいたんですが…正直、ちょっと拍子抜けしています」
「ほぅ。それはなぜだ?」
「はい。こちらに配属される前に、先輩から『常に気を抜くことができないような…命がけの部隊だ』と聞かされていたものですから。まさかこんなに静かな時があるなんて、思ってもいませんでした」
「そうか。君には今のこの状況が静かだと?」
「違うんですか?」
「…じきにわかる。まぁ周りをよく見ていなさい」
「…? はい……」

「そっちはどうだ?」
「いや。まだ何も…不穏な動きは感じるんだが、レーダーに反応はない」
「こっちもだ。最大の山はどうにか越えたと思うんだが、そろそろヤツらが来る頃じゃ…」
「あぁ、そのはずだ」
「様子はどうだ?」
「あ、司令官! ご苦労様です!」
「うむ。かまわないから作業を続けてくれ」
「はい」
「で、どうだ? 動きはあったか?」
「いえ、まだです。昨夜雨が降った後なので、警戒は十分にしているのですが…」
「まだ動かないか…」
「はい…そのようです」
「今年は…気温が若干低めだからな…まだ時期尚早ということなんだろうか…」
「………」

ウィィィィーーーーーーン!!!
ウィィィィーーーーーーン!!!


『緊急事態発生! 緊急事態発生!
右舷後方より正体不明の機影接近中!
繰り返す!
右舷後方より正体不明の機影接近中!』


「後方だと?」
「おい、そっちのレーダー、どうなってんだ?」
「あ、はい…すみません」
「なんだ…お前か。新人だからって、ミスは許されないんだからな!」
「はい、わかっています」
「司令官!」
「あぁ、ついに来たようだな…見られるか?」
「ちょっと待って下さい…えーっと、はい、かなり小さいので画像は悪いですが」
「かまわん。映せ」
「了解しました。モニタ、出ます!」

---ヴォォン

「し、司令官! これはっ!?」
「あぁ…ついに来たな」
「いったい何なんですか?」
「あぁ、さっきの君か。他の部隊ではおそらく今頃撤退の準備をしていることだろう。だがここは違う。ここはは常に危険と隣り合わせ。一つの敵が去っても、また新たな敵がすぐにやってくる。そんな風に1年を通して様々な敵と戦い続けねばならんのだ」
「そんな…」
「敵 が去った後は静かに思えるかもしれん。しかしそれは新たな敵が来るまでのつかの間の準備期間だ。我々はその限られた時間の中で次の敵を迎え撃つ準備をしな くてはならない。武器の点検しかり、フィルタの交換もしかりだ。フィルタの交換が間に合わないようなら、それを少しでもクリーンに保つことがかなり重要な 課題になってくる…わかるな?」
「はい!」
「…いい返事だ」
「司令官! お話中のところ申し訳ありません」
「かまわん。どうした?」
「さきほどの機影についてですが、どうやら前方の巨大ハッチからではなく、メインゲート(りゅうかさんちの玄関)から帰艦した民間人(っていうか家族)に付着していた物と推測されます。規模の小ささから見ても、まず間違いはないかと…」
「わかった。報告ごくろう、下がっていいぞ」
「はい! 失礼します!!」
「し、司令官…」
「ん? なんだ?」
「次の敵もまた、前回みたいにその…」
「なんだ? 怖いのか?」
「いや…その、自分は何だかすごくなめてかかっていたのだという事を思い知らされた気がして…」
「ふ…大丈夫だよ。最大の敵を退けたこの船に、今も乗っている自分の勇気を信じてあげなさい。君はもう、立派なこの船の一員だよ」
「し、司令官…」
「おやおやぁ? 司令官〜、新人泣かしてもらっちゃ困りますよ〜?」
「え? 何? あらら〜、司令官。まいっちゃうなぁ」
「いや…あの先輩達! 違うんです! これは自分がまだ未熟なばっかりに…」
「ははは、いじめちゃいないよ。この新人くんも、立派な我々の仲間だって、そう話をしてたんだよ」
「なーんだ。そうでしたか」
「お前達はいったい私を何だと思っているんだ?」
「いえいえ、立派な司令官だと思っていますよ」
「どうだかなぁ…怪しいもんだ」

ウィィィィーーーーーーン!!!
ウィィィィーーーーーーン!!!


『緊急事態発生! 緊急事態発生!
前方より敵艦隊接近中!
繰り返す!
前方より敵艦隊接近中!』


「おぉ〜っと、ついに来たかぁ?」
「モニタ出ます!」
「間違いない、ブタクサだな」
「スギもまだ若干の生き残りがいたようです」
「すげぇな、こりゃ。いきなり団体さんかよ」
「ついに来たようだな。総員戦闘配備だ」
「了解! 総員戦闘配備!」
「了解!」
「さ、君もいきなさい」
「はいっ!」
「これが落ち着いたら、遅くなってしまったが、君の配属祝いをやらなきゃならんな」
「おぉ〜! そういや今年は新歓まだでしたね!」
「今度は我々がおごりますよ!」
「当たり前だ! 調子に乗ってばかすか飲み食いしやがって…この前のあの飲み会のせいで、私の財布はもう空っぽだよ」
「おごりって言ったのは司令官でしょう!」
「ものには限度ってもんがあると言っているんだ」
「へいへい…おい、新人! お前ついてるぜ!」
「そうそう! ここの連中はみんな気前がいいんだ!」
「あ、ありがとうございます!」
「ほらほら、無駄口はそのくらいにしておけ。そろそろ敵さんが射程距離内に入ってくるぞ! 急速運転でいっきにいこう!!」
「「「「「了解っ!!」」」」」

倒しても倒しても、現われる強大な敵。
スギ、そしてブタクサ、イネ…

その度に男達は立ち上がり、そして戦い続けるのだ。

今日もまた、男達は新たな敵に立ち向かう。

大切な何かを守るために…
熱い絆で結ばれた仲間達とともに……


〜<完>〜

>漢たちの熱き戦い完結編へつづく



by かぶさん





Copyright © 2002 竜棲星-Dragon's Planet
サイト内の展示物の無断転載や引用は禁止
No reproduction or republication without written permission.