family ties

11 /

「母さん、そろそろ休んだ方がいいよ。もうだいぶ遅い」
 カルナラが話題を変えた。
 ナシムは羽織っていたショールを肩にかけ直して
「ええ。じゃあ、また明日。おやすみなさい、ガフィルダ。カルナラ」
と、ダイニングを先に出て行った。

 シン――としたダイニングで、アルトダは冷や汗をずっとかいていた。
 突然、カルナラが小さな低い声で笑う。
 ぎょっとして、アルトダがカルナラを見ると、口を押さえて笑いを噛み殺していた。
「あの……?」
「いや、えらく褒められたな、と思って」
「あ」
「母さんを安心させる為だろう? ありがとう」
「いえ、本音です」
「え?」
「ずっと、自慢でした。貴方が兄である事……」
「……」
「誰にも言ったりはせずに、こっそり、ですけど」
「上に行こうか」
「はい」

 もう少し、アルトダと話をしてみたいとカルナラは思い始めた。
 彼が何を考えているのか、今みたいに、自分をどう思ってくれていたのか話をできれば、何か前進する気がする。

 二階に上がったカルナラは、ドアを開けてアルトダを先に部屋に入れた。
「うわ」
「……何考えてるんだろう。あの人は」

 灯りの点いている客間に入った二人は、間違えたのかと、廊下に出て部屋を確認した。
 他の客間は準備はされていない。

「やっぱり、ここか」
 諦めたようにカルナラは荷物を部屋に下ろした。
「どうする? 私は自室があるから、そっちへ行こうか」
「あの。これは一体」
「一緒に寝ろってんじゃいのかな。はぁ……」
 部屋の真ん中には、大人二人が寝ても充分な広さのキングサイズのベッドが一つ、きっちりベッドメイキングされて鎮座している。
 その光景を見て、アルトダは、おそるおそるカルナラに訊いてみた。

「中尉って、ずっと男性が好きだったんですか?」
「はぁ?」
「えと……その、元から男性を好きになる性質というか」
「違うよ。なんで? 興味?」
 既に荷物を開いて、中身の整理を始めたカルナラは、アルトダの顔を見ずに返事をしていた。
「じゃ、大丈夫ですよね。一緒に寝ても」
 アルトダは深く考えずに言ったのだが、カルナラがムッとした顔をして振り向いた。






Copyright © 2002 竜棲星-Dragon's Planet
サイト内の展示物の無断転載や引用は禁止
No reproduction or republication without written permission.
Update : 2007/07/16