family ties

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「おかえりっ」
 部屋に入るなり、シザークが駆け寄ってきた。
「只今戻りました。今から護衛に就きます」
「うん。で?」
「で?」
「だから、アルトダと話できた?」
 心配そうに顔を近づけるシザークに、カルナラは軽くチュっと口付けた。
「ちょっ……何! 訊いてるのに!」
 顔を離して口を押さえるシザークに、カルナラがお辞儀をした。
「時間を作ってくださってありがとうございました」
「どうだったの?」
「ええ。色んな話をしましたよ。貴方が隠してたアルトダの言葉もちゃんと聞きました」
「なんだ。もう知ったのか。つまんないの」

 部屋の奥に二人で向かいながら、ナシムがシザークによろしくと言っていた事も伝えた。
「良かった。無理やりセッティングしたけど、迷惑じゃなかった?」
「いえ。それはもう仲良く話せましたから」
「仲良く?」
「一緒に寝ましたしね」
「誰と」
「ガフィルダと」

 アルトダを名前で呼ぶ事にも驚いたが、シザークは少しむっとする。
「一緒に寝たって」
「母が大きなベッドを用意してたんですよ。二人で寄り添って寝ました」
「……そう」
「ヘンな顔」
「……」
 シザークが予想通りの反応をするのが面白くて、カルナラはわざと続ける。
「明け方まで、二人でずっと」
「……! もういいよ。話が出来たんなら、それでいい」
「何で怒ってるんですか」
「妙な言い方するからだろ」
「妙な事考えてるからでしょ」
「考えてない! 変態!」
「……そう言っちゃう時点で、ご自分がヘンな事考えてるの認めてるじゃないですか」
「うるさいな。誘導尋問みたいな事すんなよ。いやらしい」
「……すけべ」
「お前! 何言ってんだ、さっきから!」

 たまには嫉妬されるのも悪くはないだろうと仕掛けてみたものの、予想以上に怒ってしまったシザークをどうしていいものかと目を上に向けて考えていると、急に肩が重くなった。
「うー……」
 低くうなりながら、腕をカルナラの頭の後ろに回して抱きつくシザークを、カルナラはぎゅっと抱きしめ返した。
 アルトダに、シザークを泣かせるなと言われた事も思い出して、笑いながら「すみません」と謝る。
 すると、シザークが少し顔を離したと思うと、ゴンっと音がして、カルナラは激痛にふらついた。
「いっ……つぅ……」
「ばーか。心配してたのに」
 カルナラの額に思いっきり頭突きを食らわしたシザークは、
「会議行くぞ」
と、そのままドアから出て行ってしまった。

 くらくらする頭を振って、赤く腫れた額を撫でながら、カルナラは慌ててシザークの後を追って部屋を出て行った。






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Update : 2007/07/16