family ties

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 その日の夕方、アルトダはクルズと一緒に、新しく生活を始める為に必要な物を買いに街へ出かけた。
 同じ職場で長く共に仕事をして来たせいか、結婚すると言っても、お互いさほど緊張する事もなく、式の準備は順調に進んでいた。
「当座の要るものは、こんなとこかなぁ」
「荷物、どうする? 今は私の実家に運んで貰ってるけど」
「あ、その事なんだけどね」
 アルトダは、クルズの持っていた荷物も自分が持つからと言って、両手に紙袋がいっぱいに広がっていた。
「親に相談したら、アルトダ家に住むように言われたんだけど。どうする?」
「そう言ってくださるなら、もちろん、それがいいと思うわ。貴方、跡取りなんでしょう?」
「うん。でも……」
「何? 問題があるの?」
「そうじゃないよ。ただ、新婚なのに、君はいいのかなって」
「そうねー。まぁ、二人で暮らしてみたいって言うのはあるけど、何より貴方のご両親を安心させないとね。もう、お年なんでしょ?」
「うん。そうか……そうだね。ありがとう」

 クルズは、ガフィルダが養子だという事も、カルナラの実弟だという事も、もちろん知っている。
 クルズに感謝しながら、それでもアルトダは、どうも腑に落ちない部分がある。
 多分、これは、アルトダ家の方の問題というよりは、コールスリ家の方なんだろうと察していた。
「一度、話したいな」
 アルトダが知らず呟く声に、クルズが返事をした。
「誰と?」
「あ、いや。えーと、コールスリ中尉と」
「お兄さんと、ね」
「はい。兄さんと」
 にっこり笑うクルズに、アルトダも微笑む。
「荷物、半分持つわよ」
 アルトダが荷物を持ち替えたのを見て、クルズが手を出す。
「大丈夫。これくらいはするよ。レイには色々頼りっぱなしだから」
「そんな事ないわよ? まさか年上なの気にしてるんじゃないでしょうね」
「あはは。頼りにしてます」
「何よ、付いて来いなんて言ったくせに」
 頬を膨らませてみせるクルズに、アルトダは優しい声で言う。
「結婚できるのは嬉しいよ。相手がレイで良かった」
「いっ、いやだ! 何、こんな時に。私が告白した時、貴方が汗かきながら走って逃げた事は忘れてないからね」
「忘れてよ……それは」
 お互い照れくさそうに歩調を速めて、城への坂を上り始めた。



「そんなわけで」
「……」
「アルトダにも一日だけ時間空けさせたから、実家に帰れ」
「また勝手に……」
 今度は思い切り溜息をついてみせて、カルナラはあさっての方を見る。
 掃き出し窓から吹き込む風が冷たくなっているのに気づき、そのまま閉めに向かう。






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Update : 2007/07/13