family ties

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「じゃ、もう寝て。私達も、少ししたら休むよ」
「それじゃお先にね。あ、二階の客間を用意してるからね」
「わかった」
 カルナラの肩を軽く押さえてから、ナシムはダイニングのドアに向かい、振り向いてアルトダにも言う。
「ガフィルダ。カルナラの話を、たまにでいいから聞いてあげてくれる?」
 カルナラが眉をひそめて反論しようとするのを、ナシムは手で制止し、
「色々あると思うのよねぇ。母親にはちっとも相談しないけど、噂はどうしても耳に入るから」
と、やや上を向いて溜息をついた。
「え……何。私の事?」
「当たり前じゃない。出来の悪い貴方の事以外、噂なんて流れないわよ」
「出来の悪いって……」
 アルトダは、中尉にまで出世しているカルナラを、わざとそう揶揄する母がおかしくて、つい笑ってしまう。
「どうせ、またしばらく顔出さないだろうから言っちゃうけど、シザーク様との事」
「!」

 急にカルナラが身構えた事に、アルトダも緊張する。
 何を言われるのかと、カルナラが息も止めたのにも気づいた。
 ナシムはドアの前で、座っているカルナラを少し見下ろすようにして、腰に手を当てて言った。
「別に責めたりはしないわよ。ただ、どうして一度も私には言ってくれないのかなと思ってるだけ」
 アルトダは、ナシムがシザークの乳母であり、幼少のシザークの護衛や教育も任されていた事を思い出した。

「……」
 カルナラは黙ったままだ。
「あの……私、席を外しましょうか」
「あら、貴方も知ってるんでしょ? だったら構わないんじゃない?」
「構うよ……」
 カルナラがぼそりと呟く。はーっと長い溜息をついて、観念したように話し始めた。

「まぁ、それもいつかは二人に話さないといけないと思ってたから」
「そう?」
 相変わらずナシムはカルナラを軽く睨んでいる。
 アルトダは、さっきから心臓に悪い話が続くのにビクビクする一方、何年も気になっていたそれを、今、聞けるかもしれない事に少し興奮気味だった。
 会話の邪魔にならないよう、出来るだけ、この場から自分の気配を消そうと体を小さく縮める。

 カルナラは、それでも二分程、無言のままだった。
 ようやく考えがまとまったのか、両手を軽く握ってテーブルの上に置き、話し始めた。

「シザーク陛下と、特別な関係であるのは本当。つまり……仕事の上じゃなく、パートナーとして」

 そう、一気に言い終わると、また溜息をつく。
 アルトダはさっきのカルナラのように息を止めた。

「他に何言えばいいんだよ。それだけ!」
 ふてくされたような声を出して、カルナラは黙ってしまった。

「どうして、カルナラが逆ギレしてるの」
「逆……どこで覚えたんだよ。そんな言葉」
「それで、どうされるって?」
「何が?」
「えーと……私、よくわからないんだけど。貴方、男だから、シザーク様と結婚はできないわよね……?」

 カルナラが目を丸くした。
 数秒後、言葉を搾り出す。






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Update : 2007/07/16