トレモロ BL18禁

トレモロ11 擬似家族?

「何に混ざるのだ?」
「げっ?! アシュレイ?!」
 すっかり『シザーク』が抜けて素に戻っていたナスタが、驚いてドアの向こうを確認する。
そのドアの死角には『小さなナスタ』が立っていた。
「父様、何してるの?」
「お前こそ、どうした?」
「父様も父上もいなくなっちゃったから探しに来た」
 とぼとぼと歩き、『小さなナスタ』が部屋に入る。
「そ、それは悪かったな」
「一人でポテポテ歩いてたんだよん」
 そう言いながら『小さなナスタ』に付いて部屋に入ったのは、異様に背の高い……司会の男、だった。
 その声にナスタが眉間に皺を寄せる。
「お前……」

 ぷい、とナスタはそっぽを向き、
「さ、アシュレイ。ここは空気が悪い。父様のところへ行こうな」
と、アシュレイの手を引っ張って出て行った。
「あ、待ってよ。ナスタさん」

 追いかける司会のお兄さんを一瞥(いちべつ)して、ナスタは言い放った。
「お前、今度、……したら許さんと言っておいただろう」
「……って?」
「だから、……だ!」
 アシュレイの手前、そのものズバリを言うことも出来ず、ナスタは言葉を濁す。
「父上、なぁに?」
「アシュレイは知らなくていいんだ。大人の話だからな」
「えー。また?」
「また?」
 口を尖らせるアシュレイを我が子ながらかわいいと思いつつ、ナスタは訊く。
「だって、この間は父様とカルナラが客間から出てきた時に」
「え? 何かあったのか?」
「カルナラの制服のファスナーがね、半分ね、開い……」
「アシュレイ!」
 小さなアシュレイの先の言葉を予想して、ナスタは止めようとした。
「なななな、なに?」
 急にナスタに厳しい声を出され、アシュレイはたじろぐ。半泣きの顔を見て、焦ったナスタはアシュレイを片手で器用に抱き上げ
「いや、早く父様のところへ行こうな」
と言った。すると、急にアシュレイの重さが無くなる。
「俺が」
「まだ居たのか」
「ひどいな」
 睨むナスタに肩をすくめて見せて、司会のお兄さんはクスクスと笑いながら、抱き上げたアシュレイに問いかけた。
「殿下、肩車をさせていただいてもよろしいですか」
「えっ? いいの?」
 キラキラと目を輝かせるアシュレイが、了解を得ようとナスタを振り返る。
「……一回だけだぞ」
 我が子の嬉しそうな顔を取り上げる事もなかろうと、ナスタは仕方なく頭を縦に振った。
「うわー、たっかい! こわーい」
 きゃあきゃあとはしゃぐアシュレイを肩車して歩く司会のお兄さんの後ろから、ナスタは囁いた。
「お前、こんな事で許されると思ったら大間違いだぞ。後で私の部屋に来い」
「そ……れは、またあの……」
 司会のお兄さんの顔が青くなる。
「もちろんだ。おイタをした時のしつけはきちんとしないとな。今日は前回の二倍だ」
「……」
 溜息をつく司会のお兄さんを見て、ナスタはほくそえんだ。