トレモロ28 コトに及ぶ
あれほど心に靄がかかっていたのに、すっかり晴れている。
お互い同じ気持ちなら、戸惑う必要もなかった。
心が満たされていると、受ける激情も心地いい。
キスも、愛撫も快感を呼び、細胞一つ一つまでフィズによって研ぎ澄まされていく。
恥ずかしいと思っていた声も、自然と出ていた。
見られて、触られて、幸せ。
フィズの言ったことはこういうことだったのか。アルトダはようやく理解した。
「こっちも、いい?」
フィズの指がアルトダの奥に触れた。
窄 まりはまだ兄の余韻を含んでいた。
フィズの指でそろそろと触られると、思わず腰が跳ねてしまう。
ぐちゅという卑猥な音をさせながら指に自分の唾液を絡ませると、フィズはそれを練りこむように丹念に擦った。
「ン……ぁンッ……」
一度指で開かれた箇所だ。その行為からあまり時間も経ってない。
程なく解けた窄まりはゆっくりと指が進入してきた。
指の感覚を馴染ませるのにしばらく時間がかかったが、フィズは動かさず、じっとアルトダの反応を待っていた。
「経験、あるんですか? ウシロ……」
「んー? ないよ。ただ、弟の友達とかにやり方を聞いたことあるだけ」
息は絶え絶えだが、余裕そうなアルトダの様子にそろりと指を動かし始める。一緒に放って置かれていた前を擦られ、次第に射精感が現れた。
「ん……ぁ……くっ……」
それを察したのか、キュッと戒められ射精感を堰 き止められた。アルトダから不満そうな声がこぼれる。
「出すと、ウシロがまたきつくなるよ。俺も結構我慢してるんだから、もうちょっと辛抱してよ」
耳元で囁かれるとゾクゾクっと震えが背筋を走る。
「さっきより随分柔らかくなってきたから、もう一本いけるかな。辛かったらしがみ付いていいから」
フィズは断りを入れてからその行為をする。
比べたくないけど、比べてしまう。
あの時の兄の行為を。
強引に指を入れられたが、なれた手つきが自分をすぐに翻弄した。
しかしフィズは優しい。普段と同じ優しさ、いやそれ以上の優しさで抱いてくれている。
彼になら何をされても安心だと思った。
一度指を引き抜かれて、一本足してまた蹂躙 されると、快感に目の裏が強烈なピンクがに染まる。
体内を渦巻く奔流が出口を求めて一点を集中的に押している。
(これって、結構残酷……)
自身を戒めている指が少々憎くなった。
「……んっ、くっ! ああ、んっ」
「大丈夫?」
「あ……はい」
この状態で大丈夫も無いだろうと思ったが、目をつぶってフィズの気配だけを意識する。
「あ……あっ、んっ」
アルトダはフィズの指に全神経を集中した。
男らしい大きな手、指が意外にきれいな事に気が付いたばかりで、その指が……と思うだけで身体が震える。
キスをしたい――
自分が『男』に恋情を持った事に驚きを感じはしたものの、自覚した今となっては、もうこの感情を止める事はできない。
そう思っているのに―――
「いっ、てーーー!」
と、叫んだフィズが、自分の頬を押さえて、ベッドの上でのた打ち回る。
「なにもグーで殴らなくてもー!」
「あ、すみません。手が勝手に」
ひいひいと痛がるフィズに、妙に落ち着いたように聞こえる声でアルトダが答えた。
「……ちょっとひどくないー?」
「すみません! 気持ちでは納得してるんですけど、身体が勝手に!! 何でか わかりません!」
アルトダは涙目で自分の右手を見やり、開いたり握ったりしてみる。
「くうぅ、でもこのくらいじゃ諦めないからね」
頬をがしがしと撫でながらも、気を取り直してフィズが愛撫を再開しようと、アルトダの身体に乗り上がる。
「ぐはっ!」
「あ」
「み、みぞおちにモロ入った……ぐふ」
フィズがお腹を抱え、アルトダの身体の上に落ちて来た。
「ふっ……あは、あははは」
痛い痛いと騒ぐフィズを見て、アルトダは何故か笑いの衝動を抑えきれず、ぼろぼろと盛大に涙をこぼしながら、笑った。
「なんだかね」
フィズが 『この状態』 をどうしたものかと溜息をつく。
アルトダは、フィズを見つめて、呟いた。
アルトダの身体の上で動かずにいたフィズは、唐突な言葉に、驚いたように顔を上げる。
突然、噛み付くようなキスをされ、フィズが石のように固まる。
「う?」
「だから!! 『キスしましょう!』 ちゃんとしたキス! 恋人同士の!!」
「え?」
「両想いになったら、ふ、ふふふ……普通はそこから始まるんです!! こういう事の前に!!」
「……ああ、そうね」
育ての親の教育か、ずいぶんと古くさい事を言うアルトダの真面目な性格を想って、フィズが答える。
「そうだね。そうだった」
アルトダが顔を真っ赤にし、天井を睨んで叫ぶように言う言葉の裏に隠されたものに、フィズの心が温かくなる。
アルトダは泣き顔もそのままで、嗚咽しながら、キスしたいと呟いた。そして
「再チャレンジする気ありますか?」
言って、アルトダは自らフィズの頭を自分の胸に抱きしめた。
「聞くほどのこと? いまさら嫌だって言われてももう無理だし、俺止まんないよ?」
シニカルチックな笑みでままアルトダの唇に、自分の唇を押し付けた。
恋人同士のキスはとても心地よかった。
触れ合う唇の柔らかく、いい弾力だ。お互いの舌も滑らかに動き、ゾクゾクとする感覚を楽しむ。
どちらとのものとも言えない唾液が顎を伝う。フィズが追いかけて舐めると、その感触にアルトダが喘いだ。
「んふっ……あ……ンんぅ……んんん!」
もう一度アルトダの奥に触れると、絡めあう舌が引きつった。
すっかり解けていて大丈夫そうだ。
襞を伸ばすように撫でて、もう一度指を入れる。
「ああ……っふ……」
前立腺を探りそこを擦るとぎゅっと指を絞め付ける。
「だ、め……そ、ん……あぅっ」
一本から二本、二本から三本。慣れた蕾は今、大輪の花を開こうとしている。
本当は早く挿れたかった。しかし自分の欲望の為にようやく心と体を開いたアルトダの信頼を失いたくは無い。
その一心で優しく、紳士的に慣らした。普段女にもしないようなことをアルトダにしている。
いちいちお伺いを立てて、行為に及んだ。その挙句が二、三発殴られた先程の状態。
腹は立ったが、自分は大人だ、冷静になれ。とシニカルに笑って見せたのだ。
「ん、ん……っぁ……」
指を三本咥えているソコはとてもエロティックだった。声の相乗効果もスゴイ。
鳴かせたアルトダの顔もそそる。
「……っあ、ふぁ……やぁ……」
中のいい所を擦ると腹を叩くようにアルトダが跳ね上がる。
それを見て、フィズはアルトダの限界が近いことを知った。そして自分ももう無理だ。アルトダの艶やかさがフィズの限界を凌駕している。
「悪い、もう無理だ。挿れるよ」
お互い同じ気持ちなら、戸惑う必要もなかった。
心が満たされていると、受ける激情も心地いい。
キスも、愛撫も快感を呼び、細胞一つ一つまでフィズによって研ぎ澄まされていく。
恥ずかしいと思っていた声も、自然と出ていた。
見られて、触られて、幸せ。
フィズの言ったことはこういうことだったのか。アルトダはようやく理解した。
「こっちも、いい?」
フィズの指がアルトダの奥に触れた。
フィズの指でそろそろと触られると、思わず腰が跳ねてしまう。
ぐちゅという卑猥な音をさせながら指に自分の唾液を絡ませると、フィズはそれを練りこむように丹念に擦った。
「ン……ぁンッ……」
一度指で開かれた箇所だ。その行為からあまり時間も経ってない。
程なく解けた窄まりはゆっくりと指が進入してきた。
指の感覚を馴染ませるのにしばらく時間がかかったが、フィズは動かさず、じっとアルトダの反応を待っていた。
「経験、あるんですか? ウシロ……」
「んー? ないよ。ただ、弟の友達とかにやり方を聞いたことあるだけ」
息は絶え絶えだが、余裕そうなアルトダの様子にそろりと指を動かし始める。一緒に放って置かれていた前を擦られ、次第に射精感が現れた。
「ん……ぁ……くっ……」
それを察したのか、キュッと戒められ射精感を
「出すと、ウシロがまたきつくなるよ。俺も結構我慢してるんだから、もうちょっと辛抱してよ」
耳元で囁かれるとゾクゾクっと震えが背筋を走る。
「さっきより随分柔らかくなってきたから、もう一本いけるかな。辛かったらしがみ付いていいから」
フィズは断りを入れてからその行為をする。
比べたくないけど、比べてしまう。
あの時の兄の行為を。
強引に指を入れられたが、なれた手つきが自分をすぐに翻弄した。
しかしフィズは優しい。普段と同じ優しさ、いやそれ以上の優しさで抱いてくれている。
彼になら何をされても安心だと思った。
一度指を引き抜かれて、一本足してまた
体内を渦巻く奔流が出口を求めて一点を集中的に押している。
(これって、結構残酷……)
自身を戒めている指が少々憎くなった。
「……んっ、くっ! ああ、んっ」
「大丈夫?」
「あ……はい」
この状態で大丈夫も無いだろうと思ったが、目をつぶってフィズの気配だけを意識する。
「あ……あっ、んっ」
アルトダはフィズの指に全神経を集中した。
男らしい大きな手、指が意外にきれいな事に気が付いたばかりで、その指が……と思うだけで身体が震える。
キスをしたい――
自分が『男』に恋情を持った事に驚きを感じはしたものの、自覚した今となっては、もうこの感情を止める事はできない。
そう思っているのに―――
「いっ、てーーー!」
と、叫んだフィズが、自分の頬を押さえて、ベッドの上でのた打ち回る。
「なにもグーで殴らなくてもー!」
「あ、すみません。手が勝手に」
ひいひいと痛がるフィズに、妙に落ち着いたように聞こえる声でアルトダが答えた。
「……ちょっとひどくないー?」
「すみません! 気持ちでは納得してるんですけど、身体が勝手に!! 何でか わかりません!」
アルトダは涙目で自分の右手を見やり、開いたり握ったりしてみる。
「くうぅ、でもこのくらいじゃ諦めないからね」
頬をがしがしと撫でながらも、気を取り直してフィズが愛撫を再開しようと、アルトダの身体に乗り上がる。
「ぐはっ!」
「あ」
「み、みぞおちにモロ入った……ぐふ」
フィズがお腹を抱え、アルトダの身体の上に落ちて来た。
「ふっ……あは、あははは」
痛い痛いと騒ぐフィズを見て、アルトダは何故か笑いの衝動を抑えきれず、ぼろぼろと盛大に涙をこぼしながら、笑った。
「なんだかね」
フィズが 『この状態』 をどうしたものかと溜息をつく。
アルトダは、フィズを見つめて、呟いた。
アルトダの身体の上で動かずにいたフィズは、唐突な言葉に、驚いたように顔を上げる。
突然、噛み付くようなキスをされ、フィズが石のように固まる。
「う?」
「だから!! 『キスしましょう!』 ちゃんとしたキス! 恋人同士の!!」
「え?」
「両想いになったら、ふ、ふふふ……普通はそこから始まるんです!! こういう事の前に!!」
「……ああ、そうね」
育ての親の教育か、ずいぶんと古くさい事を言うアルトダの真面目な性格を想って、フィズが答える。
「そうだね。そうだった」
アルトダが顔を真っ赤にし、天井を睨んで叫ぶように言う言葉の裏に隠されたものに、フィズの心が温かくなる。
アルトダは泣き顔もそのままで、嗚咽しながら、キスしたいと呟いた。そして
「再チャレンジする気ありますか?」
言って、アルトダは自らフィズの頭を自分の胸に抱きしめた。
「聞くほどのこと? いまさら嫌だって言われてももう無理だし、俺止まんないよ?」
シニカルチックな笑みでままアルトダの唇に、自分の唇を押し付けた。
恋人同士のキスはとても心地よかった。
触れ合う唇の柔らかく、いい弾力だ。お互いの舌も滑らかに動き、ゾクゾクとする感覚を楽しむ。
どちらとのものとも言えない唾液が顎を伝う。フィズが追いかけて舐めると、その感触にアルトダが喘いだ。
「んふっ……あ……ンんぅ……んんん!」
もう一度アルトダの奥に触れると、絡めあう舌が引きつった。
すっかり解けていて大丈夫そうだ。
襞を伸ばすように撫でて、もう一度指を入れる。
「ああ……っふ……」
前立腺を探りそこを擦るとぎゅっと指を絞め付ける。
「だ、め……そ、ん……あぅっ」
一本から二本、二本から三本。慣れた蕾は今、大輪の花を開こうとしている。
本当は早く挿れたかった。しかし自分の欲望の為にようやく心と体を開いたアルトダの信頼を失いたくは無い。
その一心で優しく、紳士的に慣らした。普段女にもしないようなことをアルトダにしている。
いちいちお伺いを立てて、行為に及んだ。その挙句が二、三発殴られた先程の状態。
腹は立ったが、自分は大人だ、冷静になれ。とシニカルに笑って見せたのだ。
「ん、ん……っぁ……」
指を三本咥えているソコはとてもエロティックだった。声の相乗効果もスゴイ。
鳴かせたアルトダの顔もそそる。
「……っあ、ふぁ……やぁ……」
中のいい所を擦ると腹を叩くようにアルトダが跳ね上がる。
それを見て、フィズはアルトダの限界が近いことを知った。そして自分ももう無理だ。アルトダの艶やかさがフィズの限界を凌駕している。
「悪い、もう無理だ。挿れるよ」