トレモロ BL18禁

トレモロ63 捜索開始

「失くしたぁ?」

全員の声がハモった。
シザークは口をパクパクさせ、釣り上げたばかりの魚のようだ。
「さ、さっきまでは持ってたよね?」
「そうか? 気をつけていたんだが、若干ゆるくて気を抜いた瞬間に、一緒に抜け落ちたのかもしれん」
「人のモノ持ち歩いてるんだから、もう少し気を使ってくれよ! あぁ、もうどこに落としたんだよ……」
「へっ、陛下……取り敢えず、ナスタ様がいらっしゃったところを、みんなで手分けして探しましょう! この人数なら早く探し出せるかもしれませんよ!」
 額に手をあてしゃがみこんだシザークに、お人よしのタレンがそう提案すると、さも面倒くさそうにオクトが聞く。
「どちらに行かれたんですか?」
「屋敷内はほぼ全部だな」
「ぜっ! あんた何やってるんですか!」
 オクトが絶句すると、ナスタはシレっと口の端を歪める。
「趣味と実益を兼ねたデバガメ」
「そんなの趣味にするな! あぁーー! この屋敷全部を隈なく探すとなると……」
「夜が明けますね」
 カルナラがシザークの言葉を補う。
「それでも探すしかないでしょう。大切なものなんですから」
「我々もお手伝いします!」
「オイ!」
「ありがとう、タレン伍長。……別に、マ」
「勿論、マイルもお手伝いしますよ。な、マイル」
 にっこり笑うタレンに、オクトは盛大な溜息を吐き、
「一つ貸しだからな」
 と、力なく言った。

「よし! 探すとなると、まず一旦このパーティを終わらせないとな。いつ見つかるかわからないし、みんなを留めておく理由もないだろ。カルナラ、お前 挨拶でもして場を〆てこいよ」

 昇進祝いのパーティは、カルナラの閉会の言葉でお開きとなり、ぞろぞろと集って帰り始める者、まだ盛り上がっている者達を横目に見ながら、シザーク達は別邸の中で指輪を探す為に動き出した。

 ナスタが、考える仕草で腕組みしながら、言う。
「下の階の方が可能性は高そうだな。時間にしたら長いこと居たしな」
「ナスタ〜。全然覚えが無いのか?」
 かなりむくれてシザークが言うのを、カルナラが「落ち着いて」と促がす。
 タレンが、思い出したく無さそうに若干赤面しながらシザークに言う。
「そういえば、変な場所でもお会いしました」
「シザーク。とりあえず何組かに別れて探しましょう」
「そうだな……三組に別れて、先に下の階から探そう。ナスタ達は邸の西側を。マイル達は東側。オレとカルナラは他全部」
「下の階で見つからなければ、上もですね……あ、フィズ、伍長」
 帰ろうとする人々が出口へ向かうなかを、廊下の先をこちらに向かって来るフィズとアルトダに気がついたカルナラが、軽く手を上げ二人を呼んだ。
「どうかした?」
 フィズが、揃った面子に怪訝な顔をしてカルナラに聞いた。
「シザークの指輪が無くなったんだ。悪いが探すのを手伝ってくれ」
「え? それはまた……」
「悪いな、フィズ少尉。アルトダも。全員が会場から出たら広間の中を探してくれ」
「わかりました。陛下」
 アルトダが気の毒そうに見ながら答えた。

 そして、シザークとカルナラ、フィズとアルトダ、オクトとタレン、ナスタと司会だったはずの男の四組に別れて探す事になった。