トレモロ58 先端
まったく何も考えられない。
シザークが我を忘れてよがり狂うのはこういうことなのだろうか。
「あ〜、ヤバい。そろそろ限界。もう挿れてもいい?」
お前意外と色っぽいんだもん。とシザークが笑い、カルナラの脚を抱えて股の間に入ってきた。
「オレだからな? 今、お前に、挿れるのは、オレ、だぞ?」
安心させるように自分の存在をカルナラの不安な部分に植え付け、後孔に先端を押し付けた――
「うわ!」
叫んだカルナラが急に身じろいだ。
「だ、大丈夫だよ。カルナラ」
「大丈夫じゃありません……」
カルナラが真っ青な顔でシザークの肩を押し、身体を離そうとする。
「それにお前その状態じゃキツイじゃん。オレもだけど……」
シザークがそっとカルナラ自身に触れる。
「う! あ」
カルナラが声を押さえて息を詰めるのを、シザークが見つめる。
シザークはカルナラの表情を見つめながら、もう片方の手でカルナラの胸から脇腹を押さえつけるように撫で下ろした。
「ふっ」
カルナラの身体がびくりと弓なりに反る。
「お前って、実はこういう時、性感帯の固まりみたいになるんだな」
ふふっとシザークが意味有りげに笑う。
「……貴方だからですよ」
「え?」
言われた言葉に一瞬戸惑いながら、シザークはカルナラの目を見た。
「貴方が触れるからです。他の人間だったら嫌悪しか感じない。でも、相手が貴方だから……」
シザークは、カルナラの言葉に嬉しそうに微笑んだ。
その顔を見つめて、カルナラはシザークの肩を押さえていた手を、そのまま するりとベッドに戻した。
それを合図とするように、シザークは自分自身をカルナラの中にそっと沈めた。
シザークの細めの指とは比較にならない質量に侵蝕されるような感覚を、カルナラは入り口で思わず留める。
「あ……ぃ、ぁ」
振り絞る声と汗とが、同時にカルナラから噴き出し、シザークもそれ以上の進みの中止を余儀なくされた。
「力、抜けって。お前もオレも痛すぎる」
「わ、かってるんです、が!」
途切れる声が、カルナラの辛さを物語る。
シザークは動かずに、そっと右手でカルナラの額の汗を拭い、張り付いた髪をかき上げてやった。
短く息を継いで、カルナラがのけぞっていた背中をシーツに徐々に沈めていく。
「急がないから、お前が準備できるまでこのままでいい?」
「……」
そう言われても、まだ先しか入っていないというのに、既に充分辛い。
「や、める事はできませんか」
「……とても嫌なら」
「何で……こうなってしまったんでしょう」
「そうだな」
自分の上で くすっと笑う、やや上気したシザークの顔を見ると、カルナラは涙が出そうになった。
目尻に浮かぶそれにシザークが気づいて、慌てた声を出す。
「カルナラ。そんなに痛いのか? も、いいよ。ごめん。抜くから」
「ち、がう」
カルナラはゆっくり首を振って、少し大きさに慣れてきたそこの収縮を緩める。
はぁ、と息を吐くと、しっかりした口調で話した。
「すみません。状況に関係なく、貴方の笑顔を見ると泣きそうになる事が多いんです」
「は?」
「それと今は、頭が体についていけてなくて。貴方に触れられて、あちこち感じてるのに、こうなる事にまだ抵抗がとてもあるんです」
「お前がさ……」
少し上体を離して、シザークはカルナラの顔を見つめる。
「年齢の事、気にしてるのとか、性感が鈍くなってんじゃないかとか、オレのせいじゃないのかって、ちょっと心配してた」
「だから、こんな事になってるんですか」
カルナラは目を閉じて呆れたように、それでも笑いながら言った。
「でも、お前、さっきから感じてくれてるみたいだし」
「ええ。あの……」
「なに?」
「さっき、フィズと」
「……ああ」
フィズの名前が出ると、シザークが急に少しだけ奥に 硬いそれを押し進めた。
「いっ……!」
カルナラの顔が痛みに歪む。
「あ、悪い。つい。腹たって」
「いた……あ、すみません……」
「で?」
言いたいわけではなかったが、きちんとシザークには弁解しておかないと、後々ややこしい事になるのが目に見えていた。
「……フィズでは駄目だったから」
「気持ちよくなかった?」
「体がどうこうじゃなくて、その……さっきも言ったように、他の者では嫌悪にしかならない」
表情を変えずに自分を見下ろすシザークの視線を、気まずさも含めて受け止めて、歯が浮くのではないかと思われるセリフを続けることになる。
シザークが我を忘れてよがり狂うのはこういうことなのだろうか。
「あ〜、ヤバい。そろそろ限界。もう挿れてもいい?」
お前意外と色っぽいんだもん。とシザークが笑い、カルナラの脚を抱えて股の間に入ってきた。
「オレだからな? 今、お前に、挿れるのは、オレ、だぞ?」
安心させるように自分の存在をカルナラの不安な部分に植え付け、後孔に先端を押し付けた――
「うわ!」
叫んだカルナラが急に身じろいだ。
「だ、大丈夫だよ。カルナラ」
「大丈夫じゃありません……」
カルナラが真っ青な顔でシザークの肩を押し、身体を離そうとする。
「それにお前その状態じゃキツイじゃん。オレもだけど……」
シザークがそっとカルナラ自身に触れる。
「う! あ」
カルナラが声を押さえて息を詰めるのを、シザークが見つめる。
シザークはカルナラの表情を見つめながら、もう片方の手でカルナラの胸から脇腹を押さえつけるように撫で下ろした。
「ふっ」
カルナラの身体がびくりと弓なりに反る。
「お前って、実はこういう時、性感帯の固まりみたいになるんだな」
ふふっとシザークが意味有りげに笑う。
「……貴方だからですよ」
「え?」
言われた言葉に一瞬戸惑いながら、シザークはカルナラの目を見た。
「貴方が触れるからです。他の人間だったら嫌悪しか感じない。でも、相手が貴方だから……」
シザークは、カルナラの言葉に嬉しそうに微笑んだ。
その顔を見つめて、カルナラはシザークの肩を押さえていた手を、そのまま するりとベッドに戻した。
それを合図とするように、シザークは自分自身をカルナラの中にそっと沈めた。
シザークの細めの指とは比較にならない質量に侵蝕されるような感覚を、カルナラは入り口で思わず留める。
「あ……ぃ、ぁ」
振り絞る声と汗とが、同時にカルナラから噴き出し、シザークもそれ以上の進みの中止を余儀なくされた。
「力、抜けって。お前もオレも痛すぎる」
「わ、かってるんです、が!」
途切れる声が、カルナラの辛さを物語る。
シザークは動かずに、そっと右手でカルナラの額の汗を拭い、張り付いた髪をかき上げてやった。
短く息を継いで、カルナラがのけぞっていた背中をシーツに徐々に沈めていく。
「急がないから、お前が準備できるまでこのままでいい?」
「……」
そう言われても、まだ先しか入っていないというのに、既に充分辛い。
「や、める事はできませんか」
「……とても嫌なら」
「何で……こうなってしまったんでしょう」
「そうだな」
自分の上で くすっと笑う、やや上気したシザークの顔を見ると、カルナラは涙が出そうになった。
目尻に浮かぶそれにシザークが気づいて、慌てた声を出す。
「カルナラ。そんなに痛いのか? も、いいよ。ごめん。抜くから」
「ち、がう」
カルナラはゆっくり首を振って、少し大きさに慣れてきたそこの収縮を緩める。
はぁ、と息を吐くと、しっかりした口調で話した。
「すみません。状況に関係なく、貴方の笑顔を見ると泣きそうになる事が多いんです」
「は?」
「それと今は、頭が体についていけてなくて。貴方に触れられて、あちこち感じてるのに、こうなる事にまだ抵抗がとてもあるんです」
「お前がさ……」
少し上体を離して、シザークはカルナラの顔を見つめる。
「年齢の事、気にしてるのとか、性感が鈍くなってんじゃないかとか、オレのせいじゃないのかって、ちょっと心配してた」
「だから、こんな事になってるんですか」
カルナラは目を閉じて呆れたように、それでも笑いながら言った。
「でも、お前、さっきから感じてくれてるみたいだし」
「ええ。あの……」
「なに?」
「さっき、フィズと」
「……ああ」
フィズの名前が出ると、シザークが急に少しだけ奥に 硬いそれを押し進めた。
「いっ……!」
カルナラの顔が痛みに歪む。
「あ、悪い。つい。腹たって」
「いた……あ、すみません……」
「で?」
言いたいわけではなかったが、きちんとシザークには弁解しておかないと、後々ややこしい事になるのが目に見えていた。
「……フィズでは駄目だったから」
「気持ちよくなかった?」
「体がどうこうじゃなくて、その……さっきも言ったように、他の者では嫌悪にしかならない」
表情を変えずに自分を見下ろすシザークの視線を、気まずさも含めて受け止めて、歯が浮くのではないかと思われるセリフを続けることになる。