トレモロ12 酒乱アルトダ
「伍長、離れてくれないか」
ナスタ達が去っても、ずっと抱きついたままのアルトダにカルナラが呆れたように言った。
「いやですよぅ。邪魔者も居なくなったしー、さぁ! 親睦の続きを」
「バカ言ってるんじゃないよ」
カルナラはアルトダをひっぺがそうとしたが、急にアルトダが鼻声になった。
「兄さんは……私と仲良くなるのを望んでないんですね」
見ると涙まで流している。カルナラはぎょっとして慌てて言った。
「えっ……あ、そういうわけじゃ……」
「私は、コールスリ・カルナラという人がいる。彼は自分の兄だ、と知ったときから逢いたいと思いました。養父母にお願いをして、城に上がることになり、初めてあったとき、とっても嬉しかった」
シザークのみならず誰からも信頼を寄せられる兄。
背は高いが、まったく威圧感を感じさせない柔和な顔と物腰。
勉強熱心で真面目な反面、妙に抜けていたりする。
「一目で好きになって、兄さんを知れば知るほどどんどん大好きになった」
シザークにも嫉妬したことがある。
光と影。
二人で一対のように寄り添っているところを見ると胸の奥がチリチリした。
「伍長……」
「あの時……廊下で陛下が兄さんにキスをした時……ショックで動けなかった。陛下と兄さんを傷つけてしまいそうで……」
でも結果的には傷つけてしまったけど、とアルトダは自嘲気味に笑った。
カルナラはグスグスと鼻をすすり、目頭を押さえる弟が堪らなく愛しく見えた。彼は自分をこんなにも慕ってくれていた。気付けない自分が悔しく思った。
「ガ……ガフィルダ」
カルナラはアルトダをはじめて名前で呼んだ。
胸の中でしゃくりをあげていた弟は、弾かれた様に兄を見上げた。そして笑む。
「名前……めて呼んでくれた。嬉しい」
花が咲いたようだった笑顔。抱きつかれ、カルナラも背中に手を回した。
穏やかで優しい時間。胸の中は熱いものでいっぱいだった。
しかしカルナラは忘れていた。腕の中の弟が極度の酒乱であったことを。
そしてカルナラは知らなかった。酒を飲むことで弟の性癖が変わってしまうことを。
「兄さん、私をヤキモキさせて泣かせた罰をしてあげます」
「え?」
ナスタ達が去っても、ずっと抱きついたままのアルトダにカルナラが呆れたように言った。
「いやですよぅ。邪魔者も居なくなったしー、さぁ! 親睦の続きを」
「バカ言ってるんじゃないよ」
カルナラはアルトダをひっぺがそうとしたが、急にアルトダが鼻声になった。
「兄さんは……私と仲良くなるのを望んでないんですね」
見ると涙まで流している。カルナラはぎょっとして慌てて言った。
「えっ……あ、そういうわけじゃ……」
「私は、コールスリ・カルナラという人がいる。彼は自分の兄だ、と知ったときから逢いたいと思いました。養父母にお願いをして、城に上がることになり、初めてあったとき、とっても嬉しかった」
シザークのみならず誰からも信頼を寄せられる兄。
背は高いが、まったく威圧感を感じさせない柔和な顔と物腰。
勉強熱心で真面目な反面、妙に抜けていたりする。
「一目で好きになって、兄さんを知れば知るほどどんどん大好きになった」
シザークにも嫉妬したことがある。
光と影。
二人で一対のように寄り添っているところを見ると胸の奥がチリチリした。
「伍長……」
「あの時……廊下で陛下が兄さんにキスをした時……ショックで動けなかった。陛下と兄さんを傷つけてしまいそうで……」
でも結果的には傷つけてしまったけど、とアルトダは自嘲気味に笑った。
カルナラはグスグスと鼻をすすり、目頭を押さえる弟が堪らなく愛しく見えた。彼は自分をこんなにも慕ってくれていた。気付けない自分が悔しく思った。
「ガ……ガフィルダ」
カルナラはアルトダをはじめて名前で呼んだ。
胸の中でしゃくりをあげていた弟は、弾かれた様に兄を見上げた。そして笑む。
「名前……めて呼んでくれた。嬉しい」
花が咲いたようだった笑顔。抱きつかれ、カルナラも背中に手を回した。
穏やかで優しい時間。胸の中は熱いものでいっぱいだった。
しかしカルナラは忘れていた。腕の中の弟が極度の酒乱であったことを。
そしてカルナラは知らなかった。酒を飲むことで弟の性癖が変わってしまうことを。
「兄さん、私をヤキモキさせて泣かせた罰をしてあげます」
「え?」