トレモロ9 カルナラ、進攻
「んっ」
突然、カナデア が『シザーク』の腰を抱き口付けた。
「んーーー?!」
シザークはあまりの早業に避けることができなかった。
「ちょっ……ちょっと! まて! カルナラ! その格好で……」
シザークは、カルナラが仮装しているとは言え父親そっくりの姿の男に口付けられた衝撃で気が遠くなったが、渾身の力でその胸板を押し返した。
「やめろ! カルナラ! いくら何でもその格好のままは、嫌だ!」
「あ……」
はっと我に返ったカナデア は、腰に回した手を離して降参するように両手のひらをシザークの方へ向け、苦笑した。
「申し訳ありません。我を忘れました。というか、自分の姿は見えませんから」
「お前結構飲んでるな? いつの間に? せめてカツラを取ってからにしてくれ……泣くかもオレ」
脱力してシザークが言うのを笑って、カナデア が頭の上からカナデアと同じ髪色のウィッグをはずした。
「これでよろしいですか?」
その言葉と同時にシザークの膝裏をすくい上げ、横抱きにして歩き出す。
「カルナラ! どこ行くんだ?! パーティーの真っ最中に主役が消えたら話にならないだろ?!」
「大丈夫です。すぐ済ませますから」
にっこりと満面の笑顔でカルナラが答えた。
「嘘だ絶対嘘だ!これに関しては! 第一、オレまだ何も食べて無いし! パーティだってまだこれから……」
「私も空腹ですから貴方をいただきます」
言い切ったカルナラに赤面しながら、仏頂面でシザークが確認する。
「ここって控え室じゃん」
「そうです。鍵もかかりますし、パーティーの最中ですから誰も来ません」
そう断言してカルナラは部屋のドアを開けた。
「せっかくの昇進祝いですから、美味しくいただきます」
「何言ってんだ……」
シザークが呆れたように言い、ふっと笑って目を閉じた。
「ぅんっ」
カルナラの衣装から、懐かしい匂いがする。抱きしめられてキスを繰り返されながら、シザークは妙な気分だった。
二人はそのまま、控え室のソファに倒れるように横になる。
「は」
時折、息を継ぐカルナラの唇からは、酒の匂いが漂った。間接的に嗅ぐそれでも、むっとするような匂いは、カルナラが飲んだ量の多さを簡単に想像させる。
「カ……ルナラ、お前」
シザークが着ているカルナラの制服の前のボタンを、カルナラは手慣れた手付きで外すと、いきなり乳首に口をつけた。
「?!」
力強く吸われて、シザークは驚く。
「痛い! ちょっと……」
つんとした香りがカルナラの首筋から匂った。
まさか。
「お前、香水まで、父上のつけてんの? あっ、痛い!」
返事をせず、まだシザークの乳首を吸い上げるカルナラに、シザークも呆れて怒鳴る。
「ああ! もう! 酔ってんのかよ。痛いってさっきから言ってるだろ!」
そう言うと、カルナラの身体を突き飛ばした。
「え、あ! 申し訳ありま……」
我に帰ったような顔をしてカルナラが謝ろうとしたが、シザークは立ちあがって、ズンズンとドアに向かって歩き出した。
「シザーク」
「何か、嫌」
「え」
「父上とヤってるみたいで、嫌なの!」
ドアを開けて出て行こうとするシザークは言い足した。
「主賓が居ないのもおかしいから、もう会場に戻れよ!」
「……」
バンっと勢いよくドアを閉め、音を聞くだけで憤った様子の伺える足音を残し、シザークは居なくなってしまった。
ポツン と、情けない顔をしてカルナラは取り残された。
「誰か連れ込んだり、不用意な発言するときは誰かいないか確認しなきゃ。いっつも同じ轍踏んでますよ〜」
陽気な声がした。
突然、
「んーーー?!」
シザークはあまりの早業に避けることができなかった。
「ちょっ……ちょっと! まて! カルナラ! その格好で……」
シザークは、カルナラが仮装しているとは言え父親そっくりの姿の男に口付けられた衝撃で気が遠くなったが、渾身の力でその胸板を押し返した。
「やめろ! カルナラ! いくら何でもその格好のままは、嫌だ!」
「あ……」
はっと我に返った
「申し訳ありません。我を忘れました。というか、自分の姿は見えませんから」
「お前結構飲んでるな? いつの間に? せめてカツラを取ってからにしてくれ……泣くかもオレ」
脱力してシザークが言うのを笑って、
「これでよろしいですか?」
その言葉と同時にシザークの膝裏をすくい上げ、横抱きにして歩き出す。
「カルナラ! どこ行くんだ?! パーティーの真っ最中に主役が消えたら話にならないだろ?!」
「大丈夫です。すぐ済ませますから」
にっこりと満面の笑顔でカルナラが答えた。
「嘘だ絶対嘘だ!これに関しては! 第一、オレまだ何も食べて無いし! パーティだってまだこれから……」
「私も空腹ですから貴方をいただきます」
言い切ったカルナラに赤面しながら、仏頂面でシザークが確認する。
「ここって控え室じゃん」
「そうです。鍵もかかりますし、パーティーの最中ですから誰も来ません」
そう断言してカルナラは部屋のドアを開けた。
「せっかくの昇進祝いですから、美味しくいただきます」
「何言ってんだ……」
シザークが呆れたように言い、ふっと笑って目を閉じた。
「ぅんっ」
カルナラの衣装から、懐かしい匂いがする。抱きしめられてキスを繰り返されながら、シザークは妙な気分だった。
二人はそのまま、控え室のソファに倒れるように横になる。
「は」
時折、息を継ぐカルナラの唇からは、酒の匂いが漂った。間接的に嗅ぐそれでも、むっとするような匂いは、カルナラが飲んだ量の多さを簡単に想像させる。
「カ……ルナラ、お前」
シザークが着ているカルナラの制服の前のボタンを、カルナラは手慣れた手付きで外すと、いきなり乳首に口をつけた。
「?!」
力強く吸われて、シザークは驚く。
「痛い! ちょっと……」
つんとした香りがカルナラの首筋から匂った。
まさか。
「お前、香水まで、父上のつけてんの? あっ、痛い!」
返事をせず、まだシザークの乳首を吸い上げるカルナラに、シザークも呆れて怒鳴る。
「ああ! もう! 酔ってんのかよ。痛いってさっきから言ってるだろ!」
そう言うと、カルナラの身体を突き飛ばした。
「え、あ! 申し訳ありま……」
我に帰ったような顔をしてカルナラが謝ろうとしたが、シザークは立ちあがって、ズンズンとドアに向かって歩き出した。
「シザーク」
「何か、嫌」
「え」
「父上とヤってるみたいで、嫌なの!」
ドアを開けて出て行こうとするシザークは言い足した。
「主賓が居ないのもおかしいから、もう会場に戻れよ!」
「……」
バンっと勢いよくドアを閉め、音を聞くだけで憤った様子の伺える足音を残し、シザークは居なくなってしまった。
ポツン と、情けない顔をしてカルナラは取り残された。
「誰か連れ込んだり、不用意な発言するときは誰かいないか確認しなきゃ。いっつも同じ轍踏んでますよ〜」
陽気な声がした。