トレモロ BL18禁

トレモロ34 リード

「ごめん、ナスタ。やっぱりこれ! つけてて」
 ナスタの身体を起こしてやり、今度は加減して、シザークがナスタの口に布を当てる。
「ヘタレのパートナーはやはりヘタ……むぐぅ」
 ムッとしたナスタの気配に戦慄しながら、シザークが頭の後ろで布を縛る。
 こんなに身体を近づける事は普段の生活では有り得ない事で、幼い頃でさえ一緒に眠るのにも許可を取るのが大変だった事を思い出し、シザークは今の奇妙なこの状態に違和感でいっぱいだった。
「これでよし」
 結び方の上手さに一人納得し、気を取り直してシザークはナスタの肩を押し、ソファベッドに寝転がらせる。
 姉と思っていたとはいえ、幼少時代から培われたナスタへの恐怖心はシザークの中に根強く残っているが、いいじゃん、ナスタがいいって言ってんだからと、心の中で自分を励ます。
「ナスタ。 足! ソファの上に乗せて」
「ほーはーえー!(怒)」(訳:おーまーえー!)
 怒りを振り撒きながら、それでもナスタは両足をソファベッドの上に乗せた。
 シザークは自分もベッドに乗り、ナスタの足元に座る。
「どうしてこうなったんだろ?」
 考えても詮無い事をぐるぐると考えそうになり眉間に指を当てる。
 とりあえず続きをとナスタの身体に乗り上がる。
 シザークがナスタの首筋に唇を当てると、ナスタの身体がピクリと跳ねた。
 そのまま胸へと唇をずらしていく。
 シザークの髪がナスタの胸に触るのが くすぐったいのか、ナスタの胸が小さく跳ねる。
「んっ、ん……」
 シザークがナスタの乳首に舌を這わせる。
「んーーー!!」
「え?」
 突然、怒りの気配が最大になり、ナスタが唸りながら身体を起こした。
 いきなりの動きについて行けず、シザークがベッドの上であわあわと慌てた。
「何? いきなり……」
「お前!! 何もかもノロいぞ! イライラさせるな!」
 ばっと、目と口を覆っていた布を顔から取り去り、ナスタが咆哮した。
 身体を起こした勢いのまま、強い力で逆にシザークをベッドに貼り付ける。
「えー!?」
 あまりに理不尽な怒りについて行けず、シザークが怯える。
「ナ、ナスタ!? 何すんだっ……」
 叫ぶシザークに構わず、怒りのあまり薄く笑いながら、ナスタがシザークの腹を押さえて(またが)る。
「できないなら、面倒だ! 私が自分で入れよう」
「は?」
 恐ろしい声で笑いながら、ナスタがシザークの顔に自分の顔を近づけ、耳元に囁くように言った。
「お前はそのままじっとしていろ」
 シザークは呆然と、悪酔いし始めた ナスタの赤く輝く瞳を見つめた。

「ナスタ、もしかして酒飲んだ……?」
「ちょっとだけだ。今日は無礼講らしいから遠慮なくいただいたぞ」
 ニヤニヤしてナスタはシザークを見下ろす。
 その相好に幼い日の思い出がよみがえった。

 高笑いをしながら調度品を破壊し、止めに入ったSPを薙ぎ倒すナスタの姿を―――

「縮こまったぞ。情けない奴だ」
 恐ろしさのあまり小さくなったものを掴み、ふりふりと揺らして遊ぶ。
「ちょっと、やめ……ン」
 シザークの言葉など当然聞くはずもなく、口に含む。
 相変わらずナスタの舌の動きは巧みで、シザークはあっという間に張り詰める。
「んふ……あぁ、んんん」
 唇を器用に使っての愛撫はとても気持ちよく、そして卑猥だ。
「もう良さそうだな」
 唇を舐め、ナスタはシザークの上に圧し掛かった。
 いきなり、自分の(すぼ)みにシザークを押し付ける。
「む……無理だよ。慣らしてないんだろ?」
「うるさい。もう待てん」
 ナスタの顔が痛みに歪む。
「イタッ! 痛いよナスタ。ちょっと……焦るなよ!」
 細い腰を抱きとめ、シザークはナスタの後ろに触れた。よくカルナラがするように、唾液をたくさん絡めてある。
「――っ」
 ナスタから艶やかな吐息が漏れた。
 指で渦を描くように触れ、時たま指を差し入れる。
「ま……まどろっこしい」
 肩に爪を立てたナスタの体はすでに火照っている。
「ヘタクソ。もういい、入れるぞ」
「でも、ナスタ」
「口答えする気か!」
 光る瞳には逆らえず、シザークはナスタの腰を支えた。
 ゆっくりとナスタが腰を下ろしてくる。
 シザークは唾液を嚥下した。
 男とのセックスで初めての挿入。童貞を卒業したあの時よりも緊張していた。