トレモロ45 ゆっくりなら、怖くない
投げられるように先に部屋に押し込まれ、後からゆっくりとオクトが入ってくる。
「ここならいいだろ?」
連れて来られたのは、別宅に従事する者たちの仮眠室だった。
少し前に国王を探しに行ったときに入った部屋だった。
よくこんな部屋を覚えていたな、とタレンは感心する。
「ベッドもある。シャワーもある。文句は無いな?」
ドッサリと硬いベッドに押し倒されて、タレンは情けない声で言う。
「誰か来たらどうするんだよ」
「鍵は閉めた。ウォレスの所へ行く際に、縛られてた奴を助けて、その時貰った札も下げた」
何事にも抜かりは無い、とばかりにタレンを見た。
「本当に嫌ならやめるけど、もしそうじゃなかったら応えて欲しい」
もう無理やりなことはしたくは無い。
首筋に顔を埋めるようにオクトはタレンに許しを請う。
柔らかい髪が頬にかかった。
タレンは大きく息を吐いて、自分より大きなオクトの背中を軽く二度ほど叩いた。子をあやす様な優しい手つきだった。
「嫌なわけないだろ?」
その言葉を受けて、やおら起こし上げたオクトの顔を挟み込むように両手を添える。
「さっきのオクト、カッコよかった」
自分からは滅多にしないキスを、タレンは贈った。
先程のお礼というよりも、益々惚れ直した、の意を込めて。
お互いを掻き抱くように腕を回し、キスを深めていく。
普段は手負いの野生生物のようなオクトだが、二人きりになると、とても優しい。
「んむ……ふぁ……」
情熱的なキスにタレンは息苦しさを隠せない。
腰にはすでにオクトの熱が当たっている。
制服のボタンを外されて、隠されていた敏感な部分が露になっていく。
「あ、制服。皺になったら困る」
「クリーニング出すから平気だろう。トマト臭いぞ、この服」
「帰るまでに皺だらけでいろっていうのか?」
細かいタレンが一度気になりだしたら最後だ。
軽く舌打ちして、オクトはタレンの上から退いた。上着を脱ぎながら言う。
「わかった。そっちの椅子に掛けるから脱げ。全部だからな」
「じ、自分で脱ぐのは……」
もごもごと言い淀むタレンに業をにやし、オクトは無言ですばやくタレンのボタンを外し全てをはぎとった。
勢い込んでキスを再開すると、タレンがオクトのシャツを掴む。
「む……ぁ、オク……」
息を継ぐ間も惜しいように、口をずっと繋いだまま、オクトは器用に自分の服も全部脱いだ。
タレンの髪をまさぐりながら、激しく口付けを繰り返して肌を密着させる。
オクトの腰の両横を、タレンの曲げた大腿が挟み、二人の興奮しきった部分が固くぶつかりあった。
「ん」
何とか少し口を離して出したタレンの喘ぎがオクトの脳に響き、そして、周りが白くなった。
微かにタレンの声が聞こえる。
タレンの、まだ狭く窮屈な入り口に性急に差し入れた指が、間を置かず増やされる。
「ぁあ!」
痛みから来る声だとわかっていても、オクトはもう考えられなかった。
こんな機会でもないと、普段タレンは、なかなか性行為に及ぼうとはしないのだ。
一番最初に無理やり行ったあの恐怖がタレンから抜けきるまでに、随分 時間がかかった。
なのに、その後も、キスをするどころか体に触れようとするのも、タレンはあまり好んでしようとはしない。
不安になってオクトが理由を問うと、必ずタレンは申し訳なさそうに同じ言葉で返事をした。
「ごめん。俺……なんか淡白みたい。あんまりしたいと思わないんだ」
それからオクトは、ずっと どうしたらタレンに受け入れられる行為が出来るのか考えていた。
そして、色々と試してみて出た答えが、今の状態だ。
前置き無く、いきなり――
誰にも邪魔されずに、安心して――
清潔な場所で――
なんでこんな面倒なヤツの事、好きになったんだろう――
「い、たいよ、オクト……」
「悪い、けど止まらない」
少しでも楽になるようにと、痛みに萎縮してしまったタレン自身を扱 くと、鼻にかかった声がもれる。
一度大きくなったソコが小さくなるときにでた液で、手の動きはスムーズに行く。
前を擦る手と、同時に後ろも動かすと、痛みと快感の入り混じった、なんとも言えない表情をタレンは作り出す。
「こうすると、後ろも楽なのか?」
「ばっ……か。聞くな、ンなこと……」
「聞かなきゃ分らないだろ、ウォレスのことなんだから。僕がどうしたら気持ちよくなるのか言って欲しい」
恥ずかしさのあまり、タレンは顔を横に反らした。
「き……急に色々されると、その……怖い……ゆっくりなら、怖くない、と、思う……」
「ごめん」
下半身を弄っていた両の手を、オクトは名残惜しそうに放した。
「もっとゆっくりするよ。ウォレスがもう辛抱できないくらいになればいいんだろ?」
「し、辛抱って……」
タレンは焦った。
とんでもない方向にオクトが突っ走ろうとしているのではないか。
危機感が募る。
「耳、舐めていい?」
答える前に舌で嬲られる。
淡白ではあるが、それなりに感度はいい。
タレンはゾクゾクと首筋を粟立てた。
「次はここ」
唇を肌に押し付けたまま喋られると、それだけで声が漏れてしまう。
指で鎖骨に触れられ、ゆっくりと舌が近付いていく。
高みをきつく吸われ、薔薇色の痕が散る。
「ぅん……ちょ、待って」
「もっとゆっくり?」
「ちがっ、そうじゃなくて……」
オクトの眉間の皺を見ながら、『宣言してからの愛撫は恥ずかしい』と言うことを長い時間をかけて、ようやくタレンは口にする。
「急にされると嫌だといったのは、お前だろ。それともなにか? ペッティングだけで三時間ぐらいかけろとでも?」
「さっ、三時間なんて拷問だよ!」
「まったくもってそれには同意だね。三時間も触るだけで挿れられないなんて発狂する」
オクトはフンと鼻を鳴らした。
「さっきのと三時間とどちらか選べ、と言ったらウォレス、どっちを選ぶ? 僕としては前者を選んで欲しいんだけど」
「さ、三時間……は嫌だけど、い、一々、……舐めていいかとか、……聞かないでいいからっ」
差し入れられた指を意識しながら、その痛みを堪えてタレンが言った。
「注文が多いな」
オクトは頑ななタレンの様子に、ふぅっと演技のような溜息をついて見せ、解れていない入り口を宥 める様にして指を行き来させる。
「うあ!」
「ここならいいだろ?」
連れて来られたのは、別宅に従事する者たちの仮眠室だった。
少し前に国王を探しに行ったときに入った部屋だった。
よくこんな部屋を覚えていたな、とタレンは感心する。
「ベッドもある。シャワーもある。文句は無いな?」
ドッサリと硬いベッドに押し倒されて、タレンは情けない声で言う。
「誰か来たらどうするんだよ」
「鍵は閉めた。ウォレスの所へ行く際に、縛られてた奴を助けて、その時貰った札も下げた」
何事にも抜かりは無い、とばかりにタレンを見た。
「本当に嫌ならやめるけど、もしそうじゃなかったら応えて欲しい」
もう無理やりなことはしたくは無い。
首筋に顔を埋めるようにオクトはタレンに許しを請う。
柔らかい髪が頬にかかった。
タレンは大きく息を吐いて、自分より大きなオクトの背中を軽く二度ほど叩いた。子をあやす様な優しい手つきだった。
「嫌なわけないだろ?」
その言葉を受けて、やおら起こし上げたオクトの顔を挟み込むように両手を添える。
「さっきのオクト、カッコよかった」
自分からは滅多にしないキスを、タレンは贈った。
先程のお礼というよりも、益々惚れ直した、の意を込めて。
お互いを掻き抱くように腕を回し、キスを深めていく。
普段は手負いの野生生物のようなオクトだが、二人きりになると、とても優しい。
「んむ……ふぁ……」
情熱的なキスにタレンは息苦しさを隠せない。
腰にはすでにオクトの熱が当たっている。
制服のボタンを外されて、隠されていた敏感な部分が露になっていく。
「あ、制服。皺になったら困る」
「クリーニング出すから平気だろう。トマト臭いぞ、この服」
「帰るまでに皺だらけでいろっていうのか?」
細かいタレンが一度気になりだしたら最後だ。
軽く舌打ちして、オクトはタレンの上から退いた。上着を脱ぎながら言う。
「わかった。そっちの椅子に掛けるから脱げ。全部だからな」
「じ、自分で脱ぐのは……」
もごもごと言い淀むタレンに業をにやし、オクトは無言ですばやくタレンのボタンを外し全てをはぎとった。
勢い込んでキスを再開すると、タレンがオクトのシャツを掴む。
「む……ぁ、オク……」
息を継ぐ間も惜しいように、口をずっと繋いだまま、オクトは器用に自分の服も全部脱いだ。
タレンの髪をまさぐりながら、激しく口付けを繰り返して肌を密着させる。
オクトの腰の両横を、タレンの曲げた大腿が挟み、二人の興奮しきった部分が固くぶつかりあった。
「ん」
何とか少し口を離して出したタレンの喘ぎがオクトの脳に響き、そして、周りが白くなった。
微かにタレンの声が聞こえる。
タレンの、まだ狭く窮屈な入り口に性急に差し入れた指が、間を置かず増やされる。
「ぁあ!」
痛みから来る声だとわかっていても、オクトはもう考えられなかった。
こんな機会でもないと、普段タレンは、なかなか性行為に及ぼうとはしないのだ。
一番最初に無理やり行ったあの恐怖がタレンから抜けきるまでに、随分 時間がかかった。
なのに、その後も、キスをするどころか体に触れようとするのも、タレンはあまり好んでしようとはしない。
不安になってオクトが理由を問うと、必ずタレンは申し訳なさそうに同じ言葉で返事をした。
「ごめん。俺……なんか淡白みたい。あんまりしたいと思わないんだ」
それからオクトは、ずっと どうしたらタレンに受け入れられる行為が出来るのか考えていた。
そして、色々と試してみて出た答えが、今の状態だ。
前置き無く、いきなり――
誰にも邪魔されずに、安心して――
清潔な場所で――
なんでこんな面倒なヤツの事、好きになったんだろう――
「い、たいよ、オクト……」
「悪い、けど止まらない」
少しでも楽になるようにと、痛みに萎縮してしまったタレン自身を
一度大きくなったソコが小さくなるときにでた液で、手の動きはスムーズに行く。
前を擦る手と、同時に後ろも動かすと、痛みと快感の入り混じった、なんとも言えない表情をタレンは作り出す。
「こうすると、後ろも楽なのか?」
「ばっ……か。聞くな、ンなこと……」
「聞かなきゃ分らないだろ、ウォレスのことなんだから。僕がどうしたら気持ちよくなるのか言って欲しい」
恥ずかしさのあまり、タレンは顔を横に反らした。
「き……急に色々されると、その……怖い……ゆっくりなら、怖くない、と、思う……」
「ごめん」
下半身を弄っていた両の手を、オクトは名残惜しそうに放した。
「もっとゆっくりするよ。ウォレスがもう辛抱できないくらいになればいいんだろ?」
「し、辛抱って……」
タレンは焦った。
とんでもない方向にオクトが突っ走ろうとしているのではないか。
危機感が募る。
「耳、舐めていい?」
答える前に舌で嬲られる。
淡白ではあるが、それなりに感度はいい。
タレンはゾクゾクと首筋を粟立てた。
「次はここ」
唇を肌に押し付けたまま喋られると、それだけで声が漏れてしまう。
指で鎖骨に触れられ、ゆっくりと舌が近付いていく。
高みをきつく吸われ、薔薇色の痕が散る。
「ぅん……ちょ、待って」
「もっとゆっくり?」
「ちがっ、そうじゃなくて……」
オクトの眉間の皺を見ながら、『宣言してからの愛撫は恥ずかしい』と言うことを長い時間をかけて、ようやくタレンは口にする。
「急にされると嫌だといったのは、お前だろ。それともなにか? ペッティングだけで三時間ぐらいかけろとでも?」
「さっ、三時間なんて拷問だよ!」
「まったくもってそれには同意だね。三時間も触るだけで挿れられないなんて発狂する」
オクトはフンと鼻を鳴らした。
「さっきのと三時間とどちらか選べ、と言ったらウォレス、どっちを選ぶ? 僕としては前者を選んで欲しいんだけど」
「さ、三時間……は嫌だけど、い、一々、……舐めていいかとか、……聞かないでいいからっ」
差し入れられた指を意識しながら、その痛みを堪えてタレンが言った。
「注文が多いな」
オクトは頑ななタレンの様子に、ふぅっと演技のような溜息をついて見せ、解れていない入り口を
「うあ!」