トレモロ BL18禁

トレモロ19 兄弟に翻弄される

 アルトダはカルナラの手を取った。
 指を舐め、たっぷり唾液を絡ませて、そうして自分の後ろに導いた。

「ガフィルダ!」
 叱責するようにカルナラが名を呼ぶ。
 アルトダは真摯な瞳でカルナラを見つめ、懇願した。
「お願いです。カルナラ兄さん。一度だけ……」
 その目を見つめ返し、ふぅっと諦めたように溜息をついてカルナラが言った。
「今日だけだ。明日には忘れなさい」
 そう言うと、アルトダが導くとおりにそこへ指を差し入れた。
「あうっ。痛っ」
 予想外な痛みにアルトダは身体を震わせた。
「大丈夫か?」
「うっ。は、はい」
 アルトダは、カルナラが問うのに答えながらシザークを見た。
 カルナラに穿たれながら甘い息をはくシザークの、その自由にたゆたう姿を綺麗だと思う反面、不思議に思って呟いた。
「痛くなかったのかな?」
「そりゃあ痛かったろうと思うよ」
 カルナラが、ほんの少し指を動かすだけでも その痛みに耐え兼ねて身体を振るわせるアルトダに、指の動きを止めて、呟くように答えた。
「何せ初めての時は暴れられたし痛がって泣いてたしね」
『この兄はどれ程飲んだのか』
 カルナラが、普段なら絶対に言わない言葉を酔いにまかせて暴露する様を見て、アルトダが密かに笑う。
自分も、兄が想うこの綺麗な人を、嫉妬する気持ちと同じくらい好きなのだ、と思い途方に暮れる。
「ばか! 何話してんだよ。そんなことっ……」
 シザークが薄く目を開けて咎める。
 カルナラがシザークの瞳を覗くように見つめるのを切なく思いながら、アルトダは再度カルナラに懇願した。
「もう慣れて来ましたから……大丈夫だから。兄さん」
「ガフィルダ」
「抱いてくれとは言いません。だからっ……お願いです!」
 嗚咽しそうになる声を無理に絞り出すようにして望むアルトダに、カルナラは答えるようにゆっくりと指に力を入れた。

 指を鍵状にすれば大抵イイ部分にぶつかる。
 案の定アルトダもすぐにソコの感覚に夢中になった。
「二本じゃ物足りなそうだな。もう一本いけるか?」
 そう鬼畜めいたことを言ってカルナラはアルトダに薬指を足そうとする。
 シザークがギョッとしてカルナラを見ると、なんとなく目が据わっている感じがした。
 先程までは普通だったのに、どこかでスイッチが切り替わってしまったようだった。
 過度なアルコール摂取後の運動で酔いが回ってきたのだろうか。
 それとも酒乱の兄はやはり酒乱なのだろうか。

「カルナラ、アルトダは初めてなんだから……」
「シザーク、他人の心配ができるなんてあなたも足らない? びっちり銜えてるけど、足らないならあなたにも足してあげましょうか?」
 そういって結合部をくるりと撫でる。
「ひんんっ」
「凄く濡れてるから余裕で入りそうですよ」
 爪で肉をめくるようにするとシザークが啼いた。大きく頭を振る。
「無理っ! 無理だからぁ」
 カルナラは爪で遊ぶ行為を繰り返しながらアルトダにも問う。
「ガフィルダ、お前はどうする? もう一本欲しいか?」
「……」
「ガフィルダ」
 無言の弟に畳み掛けるようにカルナラは言った。顔を引き寄せられ、唇が触れそうになる距離でもう一度問う。
「欲しいんだろう?」
「ほ……欲しい……」
 目の前にある兄のどこか陰のある表情に、ごくりと喉が鳴った。
「欲しいじゃないだろう? ん? なんと言ってお願いするんだ?」
 アルトダはガクガクと震えながら懇願した。
 指を増やして穿って欲しい、と。
 乞われたカルナラは、ありえないほど冷たい笑みを浮かべ弟の望みを叶えてやった。
 さすがに、三本はきつかった。しかし、似たような太さのモノを受け入れているシザークは恍惚の表情だ。
「カル……ナラぁ。も……だめっ」
「我慢できない?」
 耳元で囁くと首を立てに何度か振る。仕方ない、と言った表情でアルトダから指を引き抜くと両の手で引き締まった腰を掴み、突き上げ始めた。
 シザークはカルナラを締め付け、一度大きく啼き、次にだらんと身体を弛緩させた。
 胸が鞴のように動き、新しい酸素を取り込んでいる。
 吐精したんだ、とアルトダは思った。
 シザークの濡れた青い瞳がゆっくりと瞼に隠されていく。

 気を失うように寝てしまったシザークを起こさないように、そっとカルナラは自身を抜いた。
 同じ兄弟なのに自分とは違うモノを思わず凝視してしまう。
「ヤリづらい」
 下半身をむき出しのまま、ソファにどっかり座ったまま、突然カルナラが言った。
「一度に二人の人間なんて相手にできるか」
 大きく息を吐き、カルナラはアルトダに言った。