トレモロ BL18禁

トレモロ16 して欲しい

「シザーク……」
 思わずカルナラが手を離した。
 シザークは無理に身を捩って足を閉じる。
「駄目ですよお、陛下ぁ〜。言う事聞いてくれなきゃ〜」
 うへへへと笑いながらアルトダがシザークを握る指に力を入れた。
「あうっ!」
 痛みにシザークが喉を反らす。
「伍長!やめなさい!」
「じゃあ早くして下さい〜」
「や、やめろ。見られてんのにできるかっ……」
 シザークは痛みと羞恥に潤んだ目で、アルトダを睨んだ。
「陛下って色っぽかったんですね〜」
 酔っ払っいのアルトダがシザークの顎に吸い付く。
シザークが顔を反らして逃げると今度は首筋を舐め始めた。
「ううっ」
シザークがぎゅっと目を閉じて堪えるのに、見かねたカルナラが言う。
「やめなさい。伍長」
 アルトダの額に手を当ててシザークから引き離した。
「仕方がありません。やりましょう」
 カルナラも所詮は りっぱな酔っ払いだ。一時困りはしたものの、普段と違い、判断力、羞恥心はきれいさっぱり紛失していた。
「馬鹿言うな!」
 赤面して言うシザークのひざを身体で割り開き、その両足を自分の両肩に掛けた。
「やめろ! 嫌だっ! こんな状況じゃ、どっちにしても痛いじゃんか!」
シザークは痛みを想像し、涙目で抗議した。
「痛くしないよう努力します」
「嘘だっ。そんな……」
 カルナラが、シザークの着ている制服の上着のボタンを外しにかかると、シザークが力の入らない腕を上げ、カルナラの顎を両手で押して引き剥がそうと試みる。
「なんでこうなるんだよ!?」
「すみません。諦めてください。シザーク」
 あがくシザークの両手を頭の上で一つにまとめて押さえ、酔っ払いの勢いで、カルナラは自分を罵倒するシザークの唇を塞いだ。
「んんっ」
そのとたん、アルトダが思いついたようにふふふと笑い、シザーク自身に指で悪戯を始めた。
 喉の奥で講義の声を上げていたシザークが驚いたように目を見開いた。

「これは私の手だと思って……」
 カルナラが耳元で囁いた。
 そうだ、この手をカルナラだと思えばいい。
 シザークはそう思いこもうとキスに夢中になった。
 一番好きなカルナラとのキス。
 下肢を弄るのもカルナラの暖かい手。
 いつしか下肢はしとどに濡れ、手の動きに合わせて揺れていた。
「陛下っていやらしい」
 夢が現か、曖昧な中を漂っていたシザークは虚ろな目でアルトダを振り返った。
 緑の瞳と目が合う。カルナラと同じ色。

「カルナラが……ふたり?」

 シザークが呟くとアルトダはクスリと笑った。
「そう私がふたり。嬉しいでしょ?」
 アルトダの掠れた声が耳朶(みみたぶ)をくすぐった。
「思ったことがあるでしょう? 口で(くわ)えながらココにも受け入れたいって」
「ひっ……」
 蜜で濡れた秘所を擦られ、シザークは身を竦ませた。カルナラはアルトダの指を間接とは逆に曲げ、そこから離した。
「触れるな、伍長!」
「兄さんがグズグズしてるからじゃないですか。陛下のココ、早く欲しくてヒクヒクしてるんですよ。可哀想じゃないですか」
「やめて……も……許して……」
 消え入りそうな声でシザークが泣く。
「ここでやめたら辛いのは陛下、あなたでしょ? 兄さんが最後までしますから、だから私にも最後まで見せて……」
「見るだけでいいのか?」
 カルナラは上半身を起こし、シザークを守るように抱き寄せた。
「さっきから聞いていればヤれだ、見せろだと、そっちこそ溜まってるんじゃないのか? そんなことでシザークに当たるのはやめてくれ。抜いて欲しいなら手伝ってやる。その代わりシザークにはもう触れないでくれ」
 いつもはアルトダに対して遠慮がちなカルナラだが、今は違っていた。
 アルトダがシザークを責めすぎたせいで、アルトダに対してプッツン切れちゃった。と言えばすぐに察してもらえよう。
「さあ、出しなさい、ガフィルダ」
 名前の一文字ずつを強調するように言われて、アルトダは震える指で前をくつろげた。
 伝染したかのように、膝も震える。
 酔っていると言っても、呂律ははっきりしている。要は、酒のせいにして、カルナラとどうにかなりたいだけなのか。
 十六年間、兄を独り占めにした国王に嫉妬がないわけはない。国王だからとあの時、取り戻すのは諦めたのに、その後、あろうことか、シザークはカルナラと性的な関係を持つようになってしまった。
 自分の知らない兄の顔が増えるたび、頭にうずまくどうしようもない嫉妬を普段は苦も無く抑えていられるのは、まだ、その場面を見た事がないからかもしれない。
 なら、知りたい、と思った。
 知って、もっと嫉妬に(さいな)まれるのを望むのか、それとも、この思いをふっきる為なのか。