トレモロ20 カルナラの豹変
隠そうともせず、この人は何を言っているのだろうか。
突っ込みそうになったが、それは事実なので仕方が無い。
押し黙ったまま、まだそそり立つ部位を見ていた。ぬらぬらと光る情交の跡がアルトダを興奮させる。
弟の目の色が変わったのを見て、カルナラは訊ねた。
「お前は最終的に、私とどうなりたいんだ?」
アルトダはついさっき、"敵わない"と感じた事を思い出す。
なのに、今、この状況でいくら理性で止めようとしても、口から出ようとする言葉は単なる欲望にまみれたものだ。
目の前で横たわるシザークの紅潮した頬を見ると、余計、考えてはいけない思考にたどり着く。
自分から何もかも奪った、美しい国王の嫉妬に歪んだ顔を、少しでも見られるだろうか。
こんな理由だけで抱いて欲しいわけではない。
単純に、興味があるのだ。
そこに、兄のものを受け入れたら、自分がどうなるか――
「私は……兄さんとしてみたいんです!!」
アルトダが叫んでカルナラのひざにすがりついた。
その様を見てカルナラは言った。
「わかった」
落ち着いた声にアルトダは驚いた。
断られると思ったからだ。
「一度だけだ。あとは酒に酔って夢を見たと思って忘れる。できるか?」
アルトダは頷いた。その顔はとても緊張していた。
そして、カルナラとついに…と思うと興奮して止まない。
「に……兄さん……」
アルトダがカルナラに触れようとした、その瞬間、
「時間切れだ」
と、ナスタがどこからともなく沸いてきた。
「こんな状態だが、着付けはどれくらいで終わる?」
「十分もあれば」
「五分でやれ」
「かしこまりました」
ぽかーんとした顔でアルトダは連れ出され、シザークは運ばれ、カルナラは身の回りを整えられていく。
屋敷の者に指示を与え終えると、ナスタはカルナラを呆れたというか、馬鹿にしたような顔で言った。
「主役がこれ以上不在でどうする。十分休憩時間をやったろう。それまでにできなかったのは、アルトダとお前はするべきでない、という神の啓示だ。カルナラ、その啓示は不満だったか?」
問われると、
「いえ……最良のご判断だったと、思います」
狐につままれたような顔つきでカルナラが小さく答えると、ハン、とナスタは鼻で笑った。
「着付けが終わったら会場に戻るぞ。私はまだ何も楽しんでいないんだ。最後まで私が楽しいパーティになるよう努めてもらうぞ――カルナラ、お前は私の手の内にあるんだからな」
掲げたナスタの指に光るのは、失くしたはずのあの指輪だった。
突っ込みそうになったが、それは事実なので仕方が無い。
押し黙ったまま、まだそそり立つ部位を見ていた。ぬらぬらと光る情交の跡がアルトダを興奮させる。
弟の目の色が変わったのを見て、カルナラは訊ねた。
「お前は最終的に、私とどうなりたいんだ?」
アルトダはついさっき、"敵わない"と感じた事を思い出す。
なのに、今、この状況でいくら理性で止めようとしても、口から出ようとする言葉は単なる欲望にまみれたものだ。
目の前で横たわるシザークの紅潮した頬を見ると、余計、考えてはいけない思考にたどり着く。
自分から何もかも奪った、美しい国王の嫉妬に歪んだ顔を、少しでも見られるだろうか。
こんな理由だけで抱いて欲しいわけではない。
単純に、興味があるのだ。
そこに、兄のものを受け入れたら、自分がどうなるか――
「私は……兄さんとしてみたいんです!!」
アルトダが叫んでカルナラのひざにすがりついた。
その様を見てカルナラは言った。
「わかった」
落ち着いた声にアルトダは驚いた。
断られると思ったからだ。
「一度だけだ。あとは酒に酔って夢を見たと思って忘れる。できるか?」
アルトダは頷いた。その顔はとても緊張していた。
そして、カルナラとついに…と思うと興奮して止まない。
「に……兄さん……」
アルトダがカルナラに触れようとした、その瞬間、
「時間切れだ」
と、ナスタがどこからともなく沸いてきた。
「こんな状態だが、着付けはどれくらいで終わる?」
「十分もあれば」
「五分でやれ」
「かしこまりました」
ぽかーんとした顔でアルトダは連れ出され、シザークは運ばれ、カルナラは身の回りを整えられていく。
屋敷の者に指示を与え終えると、ナスタはカルナラを呆れたというか、馬鹿にしたような顔で言った。
「主役がこれ以上不在でどうする。十分休憩時間をやったろう。それまでにできなかったのは、アルトダとお前はするべきでない、という神の啓示だ。カルナラ、その啓示は不満だったか?」
問われると、
「いえ……最良のご判断だったと、思います」
狐につままれたような顔つきでカルナラが小さく答えると、ハン、とナスタは鼻で笑った。
「着付けが終わったら会場に戻るぞ。私はまだ何も楽しんでいないんだ。最後まで私が楽しいパーティになるよう努めてもらうぞ――カルナラ、お前は私の手の内にあるんだからな」
掲げたナスタの指に光るのは、失くしたはずのあの指輪だった。