トレモロ3 ナスタ別邸にて
常ならば、風に揺れる木の葉の音と、小鳥のさえずりだけが聞こえる、ナスタの住まう別邸は、常とは違う喧騒 にその身を明け渡していた。
「フィズ少尉! 『アルトダ』だって?」
「はい。上手くはやれない気がしますが」
はーっとため息をつくフィズを、シザークが笑いながら励ます。
「いいんだよ。単なるお祭り騒ぎにしたいだけなんだからナスタは」
「陛下はもちろん、ですよね?」
シザークが腕にSPの制服を掛けているのを見て、当たり前のようにフィズが聞いた。
「うん。カルナラの予備の制服をこっそり持ち出したんだ」
「はあ」
「カルナラに見つからないよう持ち出すのは大変だったけど、小さい頃にやったかくれんぼみたいで面白かったよ」
シザークが少しだけ昔を懐かしむような目をする。
「でもまた、カルナラを迎えに城まで戻るんだ。カルナラきっと驚くぞ。『仮装&人格仮装パーティ』なんて。」
「それはどなたが思いついたんですか?」
若干げんなりとしたフィズが、浮かれるシザークにその疲労の原因を作った人物を聞いた。
「え? ナスタだよ? 『ただの仮装じゃ物足りん! どうせなら人格ごと取り替えるくらいしろ!』って言ってさ。」
と、シザークがナスタの真似をし、腰に手を当てて反り返る。
「あ、ナスタ様」
フィズが、シザークの真後ろに立ったナスタに気が付き、思わず一歩後ろに下がった。
「よっ! お前ら早かったな」
軽く右手を上げてにこやかに挨拶するナスタを見て、フィズは目を剥いて二人を交互に凝視した。
ずっとシザークと話をしていたから、今来たのはナスタだと思って声をかけたのだが、並ばれた今はどちらがどちらだかわからない。
どう見ても同じ顔。高いヒールの靴でも履いているのだろうか。身長もほぼ同じだった。
シザークはなにやら気持ち悪いものを見る目でナスタを見ていた。
「ナ……ナスタ……はオレ……?」
「そうだよ。お前を演じられるのはオレ以外に誰がいるっていうんだ?」
腰に手を当てて豪快に笑う。
すでにシザークになりきっている。
ナスタのコピーは完璧だった。
シザークは上から下まで何度も往復させ、ふと見慣れた指輪で視線を止めた。
「この指輪もわざわざ用意したのか?」
「オレに不可能はなーーい」
Vサインを掲げるナスタを見て、シザークは頭が痛くなった。
他人から見る自分ってこういう存在なのだ。どうみてもバカっぽい。
(みんなにいつも言われているけど、これじゃ確かに国王の威厳なんてないよな……この間はムキになって自分ことを『余』とか言ったけど、これからもそれで貫いたほうがいいかも)
ナスタの人格仮装パーティは、意外にも帝王学的な効果があったようだ。
このパーティ中にナスタを観察して、他人から見た自分のことを研究しようとシザークは思った。
「それにしてもそっくりですよね。お二人が入れ替わったりしたこととかあるんですか?」
「フィズ少尉! 『アルトダ』だって?」
「はい。上手くはやれない気がしますが」
はーっとため息をつくフィズを、シザークが笑いながら励ます。
「いいんだよ。単なるお祭り騒ぎにしたいだけなんだからナスタは」
「陛下はもちろん、ですよね?」
シザークが腕にSPの制服を掛けているのを見て、当たり前のようにフィズが聞いた。
「うん。カルナラの予備の制服をこっそり持ち出したんだ」
「はあ」
「カルナラに見つからないよう持ち出すのは大変だったけど、小さい頃にやったかくれんぼみたいで面白かったよ」
シザークが少しだけ昔を懐かしむような目をする。
「でもまた、カルナラを迎えに城まで戻るんだ。カルナラきっと驚くぞ。『仮装&人格仮装パーティ』なんて。」
「それはどなたが思いついたんですか?」
若干げんなりとしたフィズが、浮かれるシザークにその疲労の原因を作った人物を聞いた。
「え? ナスタだよ? 『ただの仮装じゃ物足りん! どうせなら人格ごと取り替えるくらいしろ!』って言ってさ。」
と、シザークがナスタの真似をし、腰に手を当てて反り返る。
「あ、ナスタ様」
フィズが、シザークの真後ろに立ったナスタに気が付き、思わず一歩後ろに下がった。
「よっ! お前ら早かったな」
軽く右手を上げてにこやかに挨拶するナスタを見て、フィズは目を剥いて二人を交互に凝視した。
ずっとシザークと話をしていたから、今来たのはナスタだと思って声をかけたのだが、並ばれた今はどちらがどちらだかわからない。
どう見ても同じ顔。高いヒールの靴でも履いているのだろうか。身長もほぼ同じだった。
シザークはなにやら気持ち悪いものを見る目でナスタを見ていた。
「ナ……ナスタ……はオレ……?」
「そうだよ。お前を演じられるのはオレ以外に誰がいるっていうんだ?」
腰に手を当てて豪快に笑う。
すでにシザークになりきっている。
ナスタのコピーは完璧だった。
シザークは上から下まで何度も往復させ、ふと見慣れた指輪で視線を止めた。
「この指輪もわざわざ用意したのか?」
「オレに不可能はなーーい」
Vサインを掲げるナスタを見て、シザークは頭が痛くなった。
他人から見る自分ってこういう存在なのだ。どうみてもバカっぽい。
(みんなにいつも言われているけど、これじゃ確かに国王の威厳なんてないよな……この間はムキになって自分ことを『余』とか言ったけど、これからもそれで貫いたほうがいいかも)
ナスタの人格仮装パーティは、意外にも帝王学的な効果があったようだ。
このパーティ中にナスタを観察して、他人から見た自分のことを研究しようとシザークは思った。
「それにしてもそっくりですよね。お二人が入れ替わったりしたこととかあるんですか?」