トレモロ26 嫉妬―――?
「その、提案を、受け入れます」
(やっぱ、俺って魅力ないのかなー)
アルトダの首筋を唇で撫でながらフィズは思った。
散々ごねておいて、カルナラの名前を出したら一発だった。
『男に興味がある』というより、『カルナラに興味がある』とまさに認めたようなものである。
(こうなったら徹底的にカルナラになりきって抱くべき? でも、それって俺のプライドも糞も無いじゃん)
色々と考え出すと悶々として、気持ちもアレも萎えてくる。
「フィズ……少尉?」
手を戒 めたベルトを解いたフィズに、アルトダは不安そうな声で言った。
「悪い……飲みすぎたのかな? あはははは」
悟られないように態 と明るい声だが、乾いているのがわかる。
「私のせいですか?」
「いや、違うよ。コレがその気にならないみたい。悪いね、あんなこと言ったのにさ」
たとえ酔っていたとしても立たなかったりしたら、男の沽券 に関わる。フィズは意外とそういうことを気にする男で、その彼がこんなことを言うのは、やはり自分が原因なのだろう。アルトダはズイとフィズに迫って言う。
「じゃあ私がその気にさせたら、続きしてもらえますか?」
「ええ?」
驚いているフィズの答えを待たず、アルトダはフィズの前をくつろげた。確かに反応は無い。
しばらくの沈黙が流れる。
(ええい、儘よ!)
アルトダは自分に気合を入れ、フィズを手に取り口に運んだ。
口にするまではいささか抵抗があるものの、一度含んでしまえば意外と平気なものだ。
人の皮膚だけだからつるつるとしていて舌触りもいい。
口の中で質量が増したり、跳ねたりするのも中々いい。
(ちょっと面白いかもしれない)
上から聞こえる呻 き交じりの吐息がアルトダを夢中にさせた。
口の中に広がるのは唾液とは違う味。
フィズからの分泌液と、自分の唾液で出し入れはスムーズになるものの、硬さも大きさも増し、これ以上口でするのはそろそろ限界だった。
どうしたらいいだろう、とちらりとフィズを見上げる。
快感に歪んだ顔が彼の限界の近さを物語っていた。
ここでやめられても辛いだろう。再び行為に集中しようとしたところで、アルトダはフィズに肩を押されて、そこから口を離した。
「もう、いい。アルトダの方、準備しないと」
押し倒されて、洋服を剥がされるとまた不安感が増してきた。
「大丈夫。経験ないわけじゃないから……と言っても男は初めてだけど」
軽くウィンクをするいつもの様子のフィズを見て、アルトダは少しだけほっとした。
さっき、首筋まで攻められたくすぐったいような感覚が、今度は胸まで下りて来る。
乳首の周りに唇を軽く当てられただけで、アルトダは思わず高い声が出た。
いつもは絶対出さないようなその声に、一瞬二人して動きが止まる。
アルトダは、声をそれ以上出さないよう、口をぎゅっと結んだ。
その仕草を微笑ましく思いながら、フィズも舐めるのを再開したが、柔らかさの全くない部分でも感じるものなのかアルトダの様子を伺う。
乳首の突起を唇に含む。
アルトダの身体がすくんで震えるのを見て、彼が感じている事を確信し、フィズは歯で挟んだまま、突起の周りを舌で撫でた。
「どんな感じ?」
含まれたまま聞かれる。
「足の指が、なんか、痺れる感じ……」
「酔ってるけど、感覚は鈍ってないじゃん。正常、正常」
喋られ、笑われ、その部分を細かい刺激が襲う。
相変わらずゾクゾクという感覚。堪らない感覚に声を抑えようとすると、身が震えた。
「身体、硬くしてると後で疲れるだけだよ。女が大きく喘ぐのは自分の身体が楽になるようにするための自衛本能。男だって同じ。ヤってるときに大きく吼えてても恥ずかしくないよ」
喘ぐのと吼えるのは随分違うような気がするのだが。
突拍子も無いことを言われ、アルトダは思わず噴出した。
「そうそう、リラックス。声聞かれたくなかったらキスしてあげるから、ね?」
年齢分だけ場数を踏んでいる、慣れた話し方だ。
最初はまったく気にしていなかったが、今は確実に気になっている。
自分の様にフィズに優しい言葉をかけられ、身体を開いていった女性たちの存在を。
これは、この感覚は、嫉妬――?
「……んっ」
アルトダはフィズの唇を意識しながら、さっきの言葉を反復していた。
『抱かれてる相手は自分で選んで思い込め』
そう言われたが、一番に思ってみた相手――カルナラは、すぐに消えてしまい、じゃあ他に? ……と考えても、当然、そういう相手として思い浮かぶ人間はいない。
アルトダがこれまでに付き合ったのはすべて女性で、自分が男にそういう感情を少しでも持つとは考えたこともなかった。
でもそれなら、この感覚は何だろう……
(やっぱ、俺って魅力ないのかなー)
アルトダの首筋を唇で撫でながらフィズは思った。
散々ごねておいて、カルナラの名前を出したら一発だった。
『男に興味がある』というより、『カルナラに興味がある』とまさに認めたようなものである。
(こうなったら徹底的にカルナラになりきって抱くべき? でも、それって俺のプライドも糞も無いじゃん)
色々と考え出すと悶々として、気持ちもアレも萎えてくる。
「フィズ……少尉?」
手を
「悪い……飲みすぎたのかな? あはははは」
悟られないように
「私のせいですか?」
「いや、違うよ。コレがその気にならないみたい。悪いね、あんなこと言ったのにさ」
たとえ酔っていたとしても立たなかったりしたら、男の
「じゃあ私がその気にさせたら、続きしてもらえますか?」
「ええ?」
驚いているフィズの答えを待たず、アルトダはフィズの前をくつろげた。確かに反応は無い。
しばらくの沈黙が流れる。
(ええい、儘よ!)
アルトダは自分に気合を入れ、フィズを手に取り口に運んだ。
口にするまではいささか抵抗があるものの、一度含んでしまえば意外と平気なものだ。
人の皮膚だけだからつるつるとしていて舌触りもいい。
口の中で質量が増したり、跳ねたりするのも中々いい。
(ちょっと面白いかもしれない)
上から聞こえる
口の中に広がるのは唾液とは違う味。
フィズからの分泌液と、自分の唾液で出し入れはスムーズになるものの、硬さも大きさも増し、これ以上口でするのはそろそろ限界だった。
どうしたらいいだろう、とちらりとフィズを見上げる。
快感に歪んだ顔が彼の限界の近さを物語っていた。
ここでやめられても辛いだろう。再び行為に集中しようとしたところで、アルトダはフィズに肩を押されて、そこから口を離した。
「もう、いい。アルトダの方、準備しないと」
押し倒されて、洋服を剥がされるとまた不安感が増してきた。
「大丈夫。経験ないわけじゃないから……と言っても男は初めてだけど」
軽くウィンクをするいつもの様子のフィズを見て、アルトダは少しだけほっとした。
さっき、首筋まで攻められたくすぐったいような感覚が、今度は胸まで下りて来る。
乳首の周りに唇を軽く当てられただけで、アルトダは思わず高い声が出た。
いつもは絶対出さないようなその声に、一瞬二人して動きが止まる。
アルトダは、声をそれ以上出さないよう、口をぎゅっと結んだ。
その仕草を微笑ましく思いながら、フィズも舐めるのを再開したが、柔らかさの全くない部分でも感じるものなのかアルトダの様子を伺う。
乳首の突起を唇に含む。
アルトダの身体がすくんで震えるのを見て、彼が感じている事を確信し、フィズは歯で挟んだまま、突起の周りを舌で撫でた。
「どんな感じ?」
含まれたまま聞かれる。
「足の指が、なんか、痺れる感じ……」
「酔ってるけど、感覚は鈍ってないじゃん。正常、正常」
喋られ、笑われ、その部分を細かい刺激が襲う。
相変わらずゾクゾクという感覚。堪らない感覚に声を抑えようとすると、身が震えた。
「身体、硬くしてると後で疲れるだけだよ。女が大きく喘ぐのは自分の身体が楽になるようにするための自衛本能。男だって同じ。ヤってるときに大きく吼えてても恥ずかしくないよ」
喘ぐのと吼えるのは随分違うような気がするのだが。
突拍子も無いことを言われ、アルトダは思わず噴出した。
「そうそう、リラックス。声聞かれたくなかったらキスしてあげるから、ね?」
年齢分だけ場数を踏んでいる、慣れた話し方だ。
最初はまったく気にしていなかったが、今は確実に気になっている。
自分の様にフィズに優しい言葉をかけられ、身体を開いていった女性たちの存在を。
これは、この感覚は、嫉妬――?
「……んっ」
アルトダはフィズの唇を意識しながら、さっきの言葉を反復していた。
『抱かれてる相手は自分で選んで思い込め』
そう言われたが、一番に思ってみた相手――カルナラは、すぐに消えてしまい、じゃあ他に? ……と考えても、当然、そういう相手として思い浮かぶ人間はいない。
アルトダがこれまでに付き合ったのはすべて女性で、自分が男にそういう感情を少しでも持つとは考えたこともなかった。
でもそれなら、この感覚は何だろう……