トレモロ30 国王デバガメ
結局ウイッグは見つからなかった。
もういいや、と思い仮装をやめて、普段の格好でシザークは料理を摘んでいる。
アシュレイの子守をしていたから、殆ど食べてない状態だった上に、カルナラとの一戦。
もうお腹が空いて空いて仕方が無かった。
好都合なことがひとつあった。
今食事をしている自分を皆がナスタが仮装していると思ったことだ。
国王本人が素で、しかも一人でいると、誰も思わなかったようで、特に話しかけられることもなく好きなものを好きなだけ食べられた。
上座にいるカルナラだけは自分が分ったようで、さっきからこちらをチラチラと見ている。
こっそりと手を振ると、目で遠くに行かないでと牽制される。
そう言われると逆らいたくなるのがシザークだ。
ジェスチャーでトイレ、と訴えてさっさと会場を後にした。
廊下はひんやりとしていた。
会場が熱気で溢れているから当然といえばそうだろう。
ふと、廊下の角を背の高い男が曲がるのが見えた。
(ん? あいつは……)
探偵よろしく、こっそりと後を追う。
間違いなく司会の男だ。
あの男がいるところにきっとナスタがいるだろう。
(ナスタには一言文句言わないと……)
男はノックをし、返事を待たずに部屋に入っていった。
聞き耳を立てると、男とナスタの声が聞こえる。自分の思った通りだ。
『ナスタさん、お水』
『すまない』
『はしゃぎすぎだよ。少し休んで』
『……ン』
チュッという音が聞こえた。その後は二人の息遣いと、情熱的なキスを贈り合う様が生々しく響く。
(そういえば、ナスタのこういうのって見たことないかも……)
思わず顔を赤らめた。
『休ませるんじゃなかったのか?』
『ちょっとだけだよ』
『――』
ナスタはふっと笑って男の名前を愛おしそうに呼ぶ。
次第に激しくなっていく中の二人にシザークは動揺した。
帰ろうと思っても体が動かない。
しかも二人の絡みを想像して、下半身が反応しかかっている。
(ど……どうしよう……)
口を手で押さえ派手に赤面しながら、シザークは室内の様子に耳をそばだてる。
(やっぱりマズイよな。国王がデバガメみたいな真似したら……)
事実デバガメだという自覚も無いまま、まずいとは思えども好奇心は押さえ切れず、シザークは耳を付けてドアに貼り付いた。
(オレ、ナスタに聞きたい事があるんだけど……これが終わらない事には中に入れないし……)
罪悪感から理由をつけて、シザークはそのまま中の音を探る。
『んっ』
『ナスタさん』
『あ、ふっ』
(うわ。マズイ……)
シザークは、兄ではあってもナスタの恋愛関係など露ほども聞いた事が無い。この状況は、好奇心どころか異常に興味津々だった。
(うわっ!うわっ!どうしよう……)
聞いた事が無いだけに、逆に生で聞くナスタの声が現実感を伴って、シザークの下半身にダイレクトに響く。
(うー……)
密かに溜息をついたシザークは、ドアに背を寄せしゃがみこんだ。
『ナスタさん?』
『―― から、向こうへ……』
(?)
二人が何かを囁くように話す声を聞いたシザークが、ふと、首だけでドアを見上げた瞬間、内側へ向かってそのドアが開いた。
「うわっ!」
引力には勝てず、当然のようにシザークは室内へ転がりこんだ。
大の字になって天井を見るシザークに
「何のご用でしょう? 国王陛下」
と、ドアを開けた司会の男が笑って言った。
もういいや、と思い仮装をやめて、普段の格好でシザークは料理を摘んでいる。
アシュレイの子守をしていたから、殆ど食べてない状態だった上に、カルナラとの一戦。
もうお腹が空いて空いて仕方が無かった。
好都合なことがひとつあった。
今食事をしている自分を皆がナスタが仮装していると思ったことだ。
国王本人が素で、しかも一人でいると、誰も思わなかったようで、特に話しかけられることもなく好きなものを好きなだけ食べられた。
上座にいるカルナラだけは自分が分ったようで、さっきからこちらをチラチラと見ている。
こっそりと手を振ると、目で遠くに行かないでと牽制される。
そう言われると逆らいたくなるのがシザークだ。
ジェスチャーでトイレ、と訴えてさっさと会場を後にした。
廊下はひんやりとしていた。
会場が熱気で溢れているから当然といえばそうだろう。
ふと、廊下の角を背の高い男が曲がるのが見えた。
(ん? あいつは……)
探偵よろしく、こっそりと後を追う。
間違いなく司会の男だ。
あの男がいるところにきっとナスタがいるだろう。
(ナスタには一言文句言わないと……)
男はノックをし、返事を待たずに部屋に入っていった。
聞き耳を立てると、男とナスタの声が聞こえる。自分の思った通りだ。
『ナスタさん、お水』
『すまない』
『はしゃぎすぎだよ。少し休んで』
『……ン』
チュッという音が聞こえた。その後は二人の息遣いと、情熱的なキスを贈り合う様が生々しく響く。
(そういえば、ナスタのこういうのって見たことないかも……)
思わず顔を赤らめた。
『休ませるんじゃなかったのか?』
『ちょっとだけだよ』
『――』
ナスタはふっと笑って男の名前を愛おしそうに呼ぶ。
次第に激しくなっていく中の二人にシザークは動揺した。
帰ろうと思っても体が動かない。
しかも二人の絡みを想像して、下半身が反応しかかっている。
(ど……どうしよう……)
口を手で押さえ派手に赤面しながら、シザークは室内の様子に耳をそばだてる。
(やっぱりマズイよな。国王がデバガメみたいな真似したら……)
事実デバガメだという自覚も無いまま、まずいとは思えども好奇心は押さえ切れず、シザークは耳を付けてドアに貼り付いた。
(オレ、ナスタに聞きたい事があるんだけど……これが終わらない事には中に入れないし……)
罪悪感から理由をつけて、シザークはそのまま中の音を探る。
『んっ』
『ナスタさん』
『あ、ふっ』
(うわ。マズイ……)
シザークは、兄ではあってもナスタの恋愛関係など露ほども聞いた事が無い。この状況は、好奇心どころか異常に興味津々だった。
(うわっ!うわっ!どうしよう……)
聞いた事が無いだけに、逆に生で聞くナスタの声が現実感を伴って、シザークの下半身にダイレクトに響く。
(うー……)
密かに溜息をついたシザークは、ドアに背を寄せしゃがみこんだ。
『ナスタさん?』
『―― から、向こうへ……』
(?)
二人が何かを囁くように話す声を聞いたシザークが、ふと、首だけでドアを見上げた瞬間、内側へ向かってそのドアが開いた。
「うわっ!」
引力には勝てず、当然のようにシザークは室内へ転がりこんだ。
大の字になって天井を見るシザークに
「何のご用でしょう? 国王陛下」
と、ドアを開けた司会の男が笑って言った。