トレモロ BL18禁

トレモロ57 灼熱の棒

「手が届くのに触れないなんて、もどかしいですね」
 カルナラの言葉に、シザークは頭を上げた。
「えー? 何? お前って余裕なの?」
 自分だったらもう息が上がって、何も考えられない状況だろうに、カルナラはまだ理性を保っている。
「いえ、余裕ではないですよ。ただ、あなたを感じさせてあげられないのは寂しいと」
「オレが感じてるのって好き?」
「ええ、とても。私があなたを狂わせているかと思うと、とても興奮します」
「オレもお前が感じてるところ好きだよ」
「こういうことってお互いが感じているところを見て、また気持ちが盛り上がるんですよね。……だから私もあなたを触りたい」
 カルナラとのキスでシザークは「うん」と言いそうになったところで、ハッと我に返った。
 思わずカルナラの二の腕に全体重をかけ、ベッドに縫いつける。そうしてから凄い勢いで頭を横に振った。
「ダメダメダメダメダメ! 雰囲気で流そうったってそうは問屋が卸さないからな!」
「ハァ……駄目ですか?」
 本当に残念そうな顔に、一瞬シザークも言葉が詰まる。
 なんで時々こう可愛いんだろうか。
 シザークはまた流されそうになるのを必死で堪えた。
「ダーメ! 約束守れないんじゃ、お前のことベッドに縛り付けるぞ?」

 軽口を叩いてはいるが、シザークの体の変化は著しい。
 早く進めないと、自分がどうにかなってしまっては、元も子もない。
 シザークは、攻めていたカルナラの胸から頭を下にずらし、ファスナーを迷わず下げて下着ごとズボンを剥ぎ取った。
 カルナラの手がこちらに動いて来ないのを確認してから、シザークは露わになったその一部に口をつける。
 途端、カルナラがふっと息を詰めた。
 カルナラのその声でさえ、自分の感覚に影響してしまわぬうちにと、シザークは舐めるよりも前に性急にそこを口に含んだ。

 シザークの舌は、カルナラが無意識に反応する部分を知っており、その部分を執拗に舐められると、噛み締めた唇から声が漏れ、カルナラ自身がピクピクと跳ねる。
 先のほうから根元のほうまでねっとりと舐めてやると、カルナラがシザークの髪の毛を掴んで、もうそろそろと目で訴える。
(攻めるより、攻められるほうがやっぱり弱いのか?)
 このまま出してしまえば遅漏ではないよな、とシザークは再び股間に顔を埋める。
「シ、ザーク……」
「ゴメン、もう少し」
 短く言うと、カルナラが嘆息し、頭をヘッドレストのほうへ勢い良く倒した。
 気にすることなく、カルナラを愛撫し続ける。
 キュッとしまった双球を手で揉み、舌で転がすと小さな喘ぎが聞こえる。

 カルナラはシザークの行為に夢中になっていた。
 いつもはシザークが早々に根を上げ、身体をつなげているが、今日は頑張って奉仕をしてくれている。
 疲れた身体に優しく心地よく、そして甘美だ。
 ただ、一つ気になるのがシザークの舌の動きだった。
 シザークはカルナラを手で擦りながら、唇をどんどんと下げ、あまり触れて欲しくない方へ近付いているのだ。
 というより、自身より下の部分など誰にも触れられたことはなく、時々肌が粟立つこの感覚がとても怖い。
「ちょ……そっちは……」
「黙ってて」
 シザークの舌がカルナラの後ろに触れた。
「ふ……」
 突然のことで身体が跳ね、変な声が出てしまう。
「シザーク!」
「オレが何しても怒らないんだろ?」
「それとこれとは……」
「酷くしないから。頼む……」

 頼むと言われても。

 カルナラは困惑していた。
 今まで受け身になることを考えたことはないからだ。
 シザークには悪いと思いながらも、男の彼を組み敷き、蹂躙してきた。
 もう十年近くもだ。
 それをいきなり入れさせろと言われても、「はいどうぞ」とは言えない。

 戸惑っている間に、シザークは指で後ろを攻めてきた。
 唾液と先走りを絡めてそっと触れてくる。
 思わずソコに力が入り、固く収縮してしまう。
「あんまり力入れるなよ。オレので分かってるだろ?」
「わっ、わかりませんよっ」
 軽く笑うシザークに対して、つい強く言ってしまう。
「分からないなら覚えとけよ。今後のオレの為にも、お前の為にも、な」
 シザークはニヤリと不敵に笑んだ。
 そ、それはこれからも攻めると言うことだろうか。
 背筋がゾッとし、尻がむず痒くなる。

「最初は気持ち悪いかもしれないけど、すぐに慣れるよ。」
 シザークはそう言って、ゆっくりと指を差し入れてきた。
 灼熱の棒を入れられたように熱い。
 指でこうなのだから、アレを入れられたらどうなってしまうのだろうか。
「結構キツいな。カルナラ、痛くないか?」
「はっ、え?」
 違和感で痛いとか気持ちいいとか、全く分からず、返答しないでいると、シザークが指でグリグリと(えぐ)るような動きを始める。
「うっ、あ……ちょっ……」
「往生際が悪いぞ、カルナラ」
「くっ……ふぅっ」
 くぐもった声とハァハァと言う息遣い。自分のものだけに生々しい。
 前を刺激され、後ろの指を増やされ、カルナラはシザークに翻弄されていた。